9.7.まとめ:Quantitative System Performance

9.6.2.3.モデルの使用法」の続きです。(目次はこちら

9.7.まとめ


 メモリとその管理は大きく2つの仕方でコンピュータ・システムの性能に影響を与える。メモリ制約の存在はシステムのマルチプログラミング・レベルに、よってスループットに限界を課す可能性がある。メモリ管理に関係するオーバヘッドは「役に立つ」仕事の進行に抵抗する可能性がある。この章で我々はこれらの効果を表現するための手法を、分離可能待ち行列ネットワーク・モデルの柔軟性を拡張する手法を、提示した。
 待ち行列ネットワーク・モデルにおけるオペレーティング・システムのメモリ・サブシステムの個々の詳細を表現することはけっして可能ではない。しかし、それは必要ではなく、そうすることは望ましくもない。後者の点は、待ち行列ネットワーク・モデルを用いるコンピュータ・システム解析の哲学的な要点であり、強調し過ぎることはない。個々の特定のモデル化スタディにおいて、個々の構成と作業負荷と調査すべき一群の質問について、性能に主要効果を持つと予想される、システムの本質的な特徴を特定することと、モデル内にこれらを、そしてこれらだけを表現することが肝要である。ケーススタディ文献の大きな本体がこの方法の成功を証明している。
 この章を閉じるにあたって、関係する2つの点を我々は言わなければならないだろう。第1に、我々がパートIIIを「手法」を基準にではなく「サブシステム」を基準に構成したという事実は、特定の手法の幅広い適用可能性が強調されていないということである。例として、単一クラス・メモリ制約サブシステムを評価するためのアルゴリズム9.1は個体数制約のある任意のサブシステムに適用可能である。(演習2を参照。)
 関係する第2の点はキャッシュ・メモリについての短い言及である。キャッシュ・メモリは時々CPUと一次メモリの間に介在する比較的小さな、速いメモリであり、それは1階層、取り除かれたメモリ階層で起こるページングと異なっていない仕方でハードウェアとファームウェアによって管理されている。キャッシュ・メモリの効果は通常、単にCPUでの処理要求時間への調整として待ち行列ネットワーク・モデルに含まれる。メモリ参照は他のイベントと比較して極端に頻繁に発生するので、これは分割法と整合している。解析者は、キャッシュを持つマシンの命令実行レートについての陳述はキャッシュ・ヒット率についてのある仮定に必然的に依存しなければならないことと、この仮定は、たぶんベンチマークによって有効性を確認すべきであることを承知していなければならない。


9.8.参考文献」に続きます。