核時計零時1分前(つづき)

今読んでいるのは、209ページ目で1962年10月25日(木)午前3時(ワシントン時間)。

 どちらのリーダーも最初はけんか腰だった。ケネディ空爆に気持ちが傾いた。フルチショフはキューバの同志に核兵器使用の権限を与えることを本気で考えていた。悩みに悩んだ末、いまではふたりとも、武力衝突によらない解決法を見つけようと決心するにいたったのだった。問題は、事実上、率直な話し合いが不可能であったことだ。どちらも相手の意図や動機がほとんどわからず、最悪の場合を想定した。メッセージを送っても、先方に届くのに半日はかかる。ようやく到着しても、そこには超大国外交におなじみのあいまいな語句が並んでいるだけだ。・・・・・・
 問題は米ソのリーダーたちが戦争を望んでいるかどうかではなくなった。彼らに戦争を防ぐ力があるかどうかが問われることとなった。この危機のクライマックスがやってくるのは、まだまだ先のことだったのである。