故障を考慮した装置処理時間の平均値と変動係数(1)

故障と段取りの考慮」で紹介しました

故障の考慮

  • t_e=\frac{t_0}{A}と置く。ただし
  • c_e^2=c_0^2+(1+c_r^2)A(1-A)\frac{MTTR}{t_0}と置く。ただし
    • c_0:装置故障の影響を除外した、本来の装置処理時間の変動係数
    • c_r:故障時間の変動係数

の式の導き出し方をここに記しておきます。


これらの式を導く際、故障間隔時間(ある故障の完了から次の故障の開始までの時間)が指数分布に従う、と仮定しています。このように仮定しないと上の式を導くことは出来ません。


さて、本来の装置処理時間を tとします。これは確率変数です。tの平均がt_0で、標準偏差\sigma_0になります。


一方、処理中に起こった故障時間も含めた処理時間を実効処理時間と呼ぶことにします。これが実際にWhittの近似式

    • CT_q=\left(\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\right)\frac{u^{sqrt{2(m+1)}-1}}{m(1-u)}t_e

に適用すべき処理時間です。それはどういうことかと言いますと、この式に登場するt_eが実効処理時間の平均であり、c_e^が実効処理時間の変動係数である、ということです。では確率変数としての実効処理時間をt_{ins}で表すことにしましょう。t_{ins}の平均がt_e標準偏差\sigma_e変動係数c_eになります。これらを実際に計算してみましょう。


本来の装置処理時間tの間に複数回故障がある場合があり得ます。そこであるtを取り上げた時、その間に起こるk番目の故障の故障時間をt_{rk}と書くことにします。
ところで、tの間にk回故障に出会う確率は、故障間隔時間が指数分布なので、(そして故障中は本来の装置処理時間は費やされないので)、ポアソン分布に従うことになります。tの間に故障に出会う平均回数はMTBF平均故障間隔時間)の定義から

  • \lambda=\frac{t}{MTBF}・・・・・(1)

となります。よってtの間にk回故障に出会う確率は、ポアソン分布の式から

  • \frac{\lambda^k}{k!}e^{-\lambda}

となります。
よってt_{ins}について以下のことが言えます。

  • t_{ins}=t

になる確率は

    • \frac{\lambda^0}{0!}e^{-\lambda}
  • t_{ins}=t+t_{r1}

になる確率は

    • \frac{\lambda^1}{1!}e^{-\lambda}
  • t_{ins}=t+t_{r1}+t_{r2}

になる確率は

    • \frac{\lambda^2}{2!}e^{-\lambda}
  • t_{ins}=t+t_{r1}+t_{r2}+t_{r3}

になる確率は

    • \frac{\lambda^3}{3!}e^{-\lambda}

(以下、同様)

ktを固定した場合のt_{ins}の平均をt_e(t,k)で表すことにします。上の式から

  • t_e(t,k)=t+k{\cdot}MTTR

となります。(t_{ri}の平均値がMTTRなので)
今度はこの式をkで平均したものをt_e(t)で表すことにします。すると、上のポアソン分布の確率の式を考慮して

  • t_e(t)=t+\Bigsum_{k=0}^\infty{k{\cdot}MTTR}\frac{\lambda^k}{k!}e^{-\lambda}=t+MTTR\Bigsum_{k=0}^\infty{k}\frac{\lambda^k}{k!}e^{-\lambda}・・・・・(2)

となります。ここで

  • \Bigsum_{k=0}^\infty{k}\frac{\lambda^k}{k!}e^{-\lambda}=e^{-\lambda}\Bigsum_{k=0}^\infty{k}\frac{\lambda^k}{k!}=e^{-\lambda}\Bigsum_{k=1}^\infty{k}\frac{\lambda^k}{k!}=e^{-\lambda}\Bigsum_{k=1}^\infty\frac{\lambda^k}{(k-1)!}=e^{-\lambda}\Bigsum_{k=0}^\infty\lambda\frac{\lambda^k}{k!}=e^{-\lambda}\lambda\Bigsum_{k=0}^\infty\frac{\lambda^k}{k!}
    • =e^{-\lambda}\lambda{e}^\lambda=\lambda・・・・・(3)

なので、(2)は

  • t_e(t)=t+MTTR\lambda・・・・・(4)

となります。ここで(1)を代入すれば

  • t_e(t)=t+MTTR\frac{t}{MTBF}=t\left(1+\frac{MTTR}{MTBF}\right)=t\frac{MTBF+MTTR}{MTBF}=\frac{t}{A}

つまり

  • t_e(t)=\frac{t}{A}

最後にこの式をtで平均すれば

  • t_e=\frac{t_0}{A}

となります。これで目的の式の1番目のものを導くことが出来ました。