10.1.導入(2):Quantitative System Performance

10.1. 導入(1)」の続きです。(目次はこちら

 どのようにしてそれは単純なモデルが正当化出来るものであるのだろうか? 単純なモデルは明示的には多くのI/Oパス要素を表現していないのであるが。その答は、通常、これらの「詳細」の影響は、測定データから得られたディスクのサービス要求時間の中に捉えられている、というものである。ディスクのサービス時間には3つの固有の要素がある。すなわち、シーク(アームを正しいシリンダに位置づけるのに必要な時間)、と、レイテンシー(欲しいデータ・レコードの開始点がヘッドの下に回転してくるのに必要な時間)と転送(データの実際の転送に必要な時間)である。しかしさらに、CPUに戻るパスがないためにデータが転送出来ない場合、ディスクは競合期間の間、客によって「ホールド」される。よって、I/Oパス競合の結果、実効ディスク・サービス時間(シーク、レイテンシー、転送、競合の時間の合計)は固有のディスク・サービス時間(シーク、レイテンシー、転送の時間の合計)より長くなる。ディスクのビジー時間もそれに応じて増加し、よってI/Oパス競合は待ち行列ネットワーク・モデルのディスク・サービス要求時間パラメータに反映される。サービス要求時間は、D_{disk}=B_{disk}/Cで計算される(ただしCはシステム完了数である)。
 修正された環境での性能を予測するために我々の正統なモデルをどのように使用することが出来るだろうか? この問いへの答は非常に単純でもあり非常に複雑でもある。他方、多くの想定されるシステムと作業負荷の修正はモデルのサービス要求時間パラメータの適切な調整によって表現するこが出来る。例えば、CPUの50%向上の主要効果は全てのCPUサービス要求時間を1.5で割ることによって表現することが出来る。つまり、2MIPS(million instructions per second)のCPU上で6秒のサービスを要求する客は3MIPSのCPU上で4秒のサービスを要求する。同様に、I/Oパスの追加やディスクの再配置の主要効果は、I/Oパス競合が減少すると予想されるので、ディスク・サービス要求時間を減らすことによって表現出来る。あいにく、この減少の量を定量化するのは困難である。この章で検討するI/Oモデル化技法の目的は解析者が意味のあるパラメータ、つまり、チャネル、コントローラ、ストリング、パス、ディスク、固有I/Oサービス要求時間、などを扱うことを可能にすることである。これらの技法はこれらのパラメータによって表現された修正をディスク・サービス要求時間の適切な修正に翻訳する役割をはたす。
 我々のスタディは我々のモデルに詳細さのレベルをどんどん増していきながら進んでいく。先に進む前に、2つの所見を示す。

  • 具体性を持たせるために我々はこの章でIBMのシステムに由来する用語法を用いることにする。しかし、我々が扱うアーキテクチャ上の特徴や我々が開発するモデル化技法は他のメーカのシステムにも等しく適用可能である。
  • 研究するコンピュータ・システムが、図10.1に示すような複雑なI/Oサブシステムを持っているという事実は、洗練されたI/Oサブシステム・モデル化技法が要求されるということを意味しない。任意のスタディを着手するにあたって、解析者は考察中の質問について注意深く考えなければならない。もし想定される修正の主要効果がディスク・サービス要求時間の簡単な調整によって(あるいは、CPU向上の場合にあり得るように、調整なしで)表現出来るならば、洗練されたI/Oサブシステム・モデル化技法は必要とされない。


10.2.非RPS I/Oサブシステムにおけるチャネル競合(1)」に続きます。