アンダーグラウンド

この時期に出すのはどうかなあ、と思いながら、でも、もう何ヶ月もこの本について書かなきゃ、とにらめっこしていたので、もう、うまく書けないけれど勢いで書いてしまえ、という気持です。
 正直な話、あまり読めていないのです。こういう記録は大切だと思うし、村上春樹のインタビューに際しての姿勢は共感出来るのですが、私には重要なことがこの中から読み取れていない感じがします。たぶん、それは私側の問題です。


 この本から離れて、あの地下鉄サリン事件当時の自分が何を感じたかについては、少し書けると思います。当時、勤めていた会社の勤めていた部署では、部員が毎日交代で昼礼の時に1分間、何かを話すことになっていたのですが、この日、K君がその話す順番になっていて、「地下鉄から毒ガスが発生しました。どうしたらいいんでしょう?」と語ったのを覚えています。ほんとに、どうしたらよいのか、分からなかったです。その頃は神奈川県に住んでいたので、東京の事件は身近でした。その後、数ヶ月は東京で仕事があっても地下鉄を避けて移動していた記憶があります。

 家に帰ってニュースを見たら、もっと驚いたニュースが入っていて、ロシアからオウムの「なんとかエウアンゲリオン」という名前の放送が松本智津夫の言葉を流している(その頃私はエヴァンゲリオンを知らなかった)、というものでした。その時、とっさに思ったのはオウムの幹部はすでにロシアに逃げているのではないか、そしてわけの分からん勝手な妄想に従って日本を攻撃するつもりではないか、ということでした。それは後でそうではなかったことが分かったのですが、その時は「クソーッ」と、ものすごいあせりと怒りと不安を感じました。

 それから数日して、オウムの幹部が次々、逮捕されるのがテレビで報じられるようになると、その人びとが自分とほぼ同年代であるのに驚きました。「よく自分は、あちら側にいなかったな」という思いがよぎりました。