10.2.非RPS I/Oサブシステムにおけるチャネル競合(1):Quantitative System Performance

10.1.導入(2)」の続きです。(目次はこちら

10.2. 非RPS I/Oサブシステムにおけるチャネル競合

 このセクションでは回転位置センシング(RPS:rotational position sensing)を実行しないディスクを持つI/Oサブシステムにおけるチャネル競合の影響を表現する技法を開発する。(RPSについては次のセクションで説明される。) 客は(図10.2に示す)そのようなシステムを以下のように巡回する。

  • CPUを待つ
  • CPUが使用可能な時に、それを使用する。
  • 特定のディスクへのアクセスを待つ。
  • そのディスクが使用可能な時に、シークする。
  • ディスクをなおも保持して、チャネルへのアクセスを待つ(競合)。
  • チャネルが使用可能な時、データを検索し(レイテンシー)転送するためにそれとディスクの両方を使用する。

2つの予備的所見

  • ディスク・シークを開始するために、実際、I/Oパスの要素への瞬間的なアクセスが要求される。ディスクI/Oサブシステムをモデル化する際、これを無視するのが慣例となっている。我々はこの章の中でそうする。
  • 分離可能待ち行列ネットワークにおいてトポロジーは重要でないことを思い出そう。重要な課題はサービス要求時間の選択であり、我々の図におけるディスクに対するチャネルの相対的な配置ではない。
  • 図10.2 高度に単純化したI/Oサブシステム

 前のセクションで記したように、特定の期間に渡っての測定から導かれたパラメータがあるとすれば、同じ期間の間に観測されたパフォーマンスを正確に再現する、非RPSディスクI/Oサブシステムの待ち行列ネットワーク・モデルを構築することは簡単なことである。個々のディスクは(単一クラスの場合)測定されたディスク・ビジー時間を測定されたシステム完了数で割ったものに等しいサービス要求時間を持つものとして個々に表現されなければならない。シークとレイテンシー、転送、競合の時間の相対的な寄与量は重要ではない。
 修正された環境についての性能を予測するモデルを用いる際に、そのディスクでの固有のサービス要求時間を調整するだけでなく(例えばデータ転送レートのより速いディスクに置き換えると転送時間の要素がより小さくなる)、チャネル競合要素の調整も必要であるだろう(同じ置き換えはチャネル・ホールド時間を減少させ、よってチャネル競合を減少させる)。そのような修正解析はベースライン・モデルを正当化する際に課せられた要求のほかに2つの要求を課すことに注意しよう。

  • 測定されたディスク・ビジー時間におけるシークとレイテンシーと転送と競合の時間の相対的な寄与率を推定する必要があるだろう。
  • 提案する修正からもたらされるであろうこれらの要素の各々の変化を見積もることが必要であろう。

 このセクションとこの章全体では、これらの要求の最も興味深い面を強調する。すなわち、我々は個々のディスクにおける要求毎の固有のサービス要求時間(シーク、レイテンシー、転送の時間)に関する情報が与えられたとした場合、要求毎のさまざまなディスクについての競合時間を、よってそのディスクでの実効サービス要求時間を見積もる技法を開発する。我々の技法を開発する際、シーク時間、レイテンシー時間、転送時間は既知であると仮定する。(あとのセクションでは典型的な測定データからこれらの値をどのように推定するかについて検討する。) 修正された環境について性能を予測するためにこれらの技法を用いるにあたって解析者は、改訂された競合要素を、よって改訂された実効サービス要求時間を見積もるアルゴリズムを頼りにして、固有サービス要求時間(例えば転送時間)を直接調整する。(第13章では修正解析についてより詳しく検討する。)
 それは我々が求める、個々のディスクkにおける実効サービス要求時間D_kであるが、D_kV_kすなわち客がディスクkを訪問する回数と、S_k、1訪問あたりの実効サービス要求時間の積として考えるのが便利である。S_kは今度はそれぞれが1訪問あたりで現される、seek_klatency_ktransfer_kcontention_kの合計として考えることが出来る。言い換えれば、

  • D_k=V_kS_k
    • =V_k(seek_k+latency_k+transfer_k+contention_k)

我々はcontention_k以外のこれらの数量の全てが既知であると仮定する。


10.2.非RPS I/Oサブシステムにおけるチャネル競合(2)」に続きます。