10.6.1.共用ディスク:Quantitative System Performance

10.6. アーキテクチャ上の他の特徴」の続きです。(目次はこちら

10.6.1. 共用ディスク


 セクション10.5で述べたように、マルチパス化の1つの利点は、それがディスクを数個のシステム間で共用することを可能にするということである。そのような構成はしばしば疎結合多重プロセッサと呼ばれている。減速としてシステムはI/Oサブシステム階層の任意のレベルで結合出来る。図10.5は典型的な場合を示している。この場合では1台のコントローラが異なるCPUに接続された2つのチャネルに結合している。

  • 図10.5 共用ディスク


 疎結合多重プロセッサは2つの仕方で見ることが出来る。つまり、たまたま複数のCPUを持つ1つのシステムとして、あるいは、たまたまディスクを共用している別々のシステムの集合として、である。2つの見方は異なるモデル化方法に導くのでこの区別は重要である。見方の選択は、特定の処理上の複雑さが実際に使用される仕方と、考慮中の性能上の質問の性質に依存する。
 最初の見方、つまり、たまたま複数のCPUを持つ1つのシステムという見方、は全てのデバイスと全ての作業負荷要素を含む1つの大きな待ち行列ネットワーク・モデルをもたらす。このモデル化方法の利点はその概念上の単純さにある。つまり何も新しい考えが含まれていない。この理由のため我々はこの見方をこれ以上、検討しない。
 2番目の見方、つまり、たまたまディスクを共用している別々のシステムの集合という見方、はそれぞれが個々のシステムに対応する小さな待ち行列ネットワーク・モデルの集合へ導く。このモデル化方法の利点はそのモジュール性、すなわち、ある修正の主要効果を1つのシステムが感じるような修正を、1つの比較的小さなモデルを定義し、パラメータの値を決め、評価することによって調査出来ること、である。そのような解析を実行することはこのサブセクションの残りの主題である。
 それらのシステムのいずれかの待ち行列ネットワーク・モデルを考察しよう。このモデルのI/Oサブシステム要素はそのシステム上の客が使用する全てのディスク、それらのディスクが専用であろうと共用であろうと、に対応するサービス・センターを含む。確かに、他のシステムに関連する要求によるI/Oサブシステム内の競合は表現されなければならない。さもなければ、興味を持つシステムに関連する要求のスループットは多めに見積られてしまう。我々はこの競合を我々のモデル内に表現することにするが、測定データから決定されるような仕方でそれを行うことになる。性能予測の目的でモデルを修正する際、他のシステムに関係する要求によるディスクとパス要素の稼動率は変わらないと仮定する。
 モデル内の個々のディスクでの実効サービス要求時間を見積もる際、他のシステムに関連する要求の効果を我々は2つの仕方で表現する。

  • 「外の」要求によるパス競合によって経験される追加の再コネクト遅れを考慮する。:さまざまなパスがビジーであることが見い出される確率についての式を評価する際、個々の共用パス要素と共用ディスクについて、他のシステムに関連する要求による測定された稼動率を、モデル内の客による計算された稼動率に加える。この調整は、実効サービス要求時間の競合要素についての現実的な見積りをもたらす。
  • 「外の」要求による使用による、ディスク獲得の際の遅れを考慮する。:個々のディスクについて、上で計算された競合要素をシーク要素、レイテンシー要素、転送要素に加える。この合計を、他のシステムに関連する要求によるディスクの測定された稼動率を1から引いたもので割る。その論理的根拠は非RPSディスクについてのチャネル競合を見積もる際に(セクション10.2)用いたものと同じである。


 我々は、興味のあるシステムへの想定される修正が存在する際に、他のシステムに関連する要求によるディスクとパス要素の稼動率が比較的安定であると仮定することが可能な場合はいつでも、この方法を推奨する。


10.6.2.キャッシュ・デバイス」に続きます。