11.1.導入:Quantitative System Performance

10.10.演習」の続きです。(目次はこちら

11.1. 導入


 これまで我々は1台のCPUのシステムのみを考察してきた。またどの客を処理するかの順番を決定するスケジュール規律の効果も無視してきた。この章ではマルチプロセッサとスケジューリング規律の表現を考察する。
 マルチプロセッサ・システムの領域では、疎結合マルチプロセッサ密結合マルチプロセッサの間に重要な区別が存在する。疎結合マルチプロセッサでは、プロセッサは主に共用直接アクセス・ストレージ・デバイスを通じて相互作用する。プロセッサは本質的に独立に動作するので、それらは待ち行列ネットワーク・モデル内では別々のサービス・センターとして表現出来る。それらは異なるCPUに起源を持つI/O動作を区別するために異なる客クラスを使用する。この方法は第10章で議論された。密結合マルチプロセッサでは、プロセッサは主メモリを共用し、通常単一のオペレーティング・システムの制御下にある。密結合マルチプロセッサ待ち行列ネットワーク・モデルを構築する際には特別な技法が必要であり、これらの技法がセクション11.2の主題である。
 スケジューリング規律は単一クラスモデルの場合無視出来た(第6章)。というのはそこでは2つの仮定を置いたからである。つまり客はそのサービス要求時間においては区別出来ない(あるいは「統計的に同一である」)、というものと、センターで処理中の客の期待残りサービス時間は、すでに客がどれだけ処理を受けたかに依存しない、というものである。(この2番目の仮定の意味は、任意の特定のセンターでの客の次の完了までの期待時間は、ある客を、別の客を処理するために処理から取り除いても変わらない、ということである。) これら2つの仮定を前提とすると、システム性能尺度は、処理すべき作業が存在している時にプロセッサがアイドルになることがない限り、使用するスケジューリング規律に依存しない。しかし、2番目の仮定は、もし連続してプロセッサを訪問する客が要求するサービスの集中が期間において大きく変化するならば破られる。セクション11.6はサービス集中が大きく変化する場合のFCFS(最初に来たものが最初に処理される)スケジューリングをモデル化するための方法を検討する。
 複数クラス・モデルでは状況はより複雑である。第7章でキューイング・センターで使用するスケジューリング規律について以下の制限がなされていた。

  • スケジューリング規律は客間でクラスIDに基づいて区別出来ない。
  • もしスケジュール規律がFCFSならば、処理中の客が完了するのに必要な平均時間はそれが得ていたサービスの量のみだけでなくそのクラスからも独立である。
  • もしスケジューリング規律がFCFSでなければ、それはプロセッサ・シェアリング(PS)と後到着先処理(LCFS)を含む規律の特定の群のうちの一つでなければならない。規律のこの群のなかの一つの重要な性質は個々の客はセンターに到着したら即座に処理を受けるということである。


 これらの制限のもとで、複数クラス・モデルの性能見積もりは任意のセンターでFCFS、PS、LCFSスケジューリングのどれが使用されるかにかかわらず同一である。あいにく、これらのスケジューリング規律は多くのオペレーティング・システム内で使用される規律を適切に表現しない。特にクラスIDとすでに受けたサービス量はしばしばスケジューリング決定を行う際に使用される。そのようなシステムの分離可能モデルはさまざまな作業負荷要素(クラス)の相対的性能を正確に反映しない。
セクション11.3で我々はクラス間の厳密な優先度に従ってスケジューリングがなされるようなシステムをモデル化する方法を提案する。
セクション11.4では優先度が純粋にクラスIDだけに基づかないようなより難しい場合を考察する。最後に、セクション11.5ではFCFSセンターへの1訪問あたりのサービス要求時間がクラスによって異なる場合のFCFSスケジューリングの場合を扱う。


11.2.密結合マルッチプロセッサ」に続きます。