11.2.密結合マルッチプロセッサ:Quantitative System Performance

11.1.導入」の続きです。(目次はこちら

11.2.密結合マルッチプロセッサ


 密結合マルチプロセッサ・システムは広く用いられている。これらのシステムは単一の共用キューから来る作業を完了するために協調する2つ以上のプロセッサを持つ。
 システム内で全てのプロセッサについて1個のジョブのキューが存在するので、密結合マルチプロセッサを1つのサービス・センターとみなすのは最も簡単である。このセンターのサービス・レート(つまり、単位時間あたりに遂行される命令の数)は理想的には個々のプロセッサのサービス・レートの合計である。よって、n個の密結合プロセッサをモデル化する単純な方法はモデル内でそれらを表現する単一のセンターを作成し、そのセンターでの全ての客のサービス要求時間を nで割ることである。
 この技法は単純な、初版のモデル化方法を提供するが、それはマルチプロセッサの2つの重要な側面を無視している。第1の側面は n個のプロセッサの総サービス・レートは、ソフトウェア・ロック(ジョブの共用キューへのアクセスをコントロールするソフトウェア・ロックのような)のための競合や主メモリにアクセスする際の干渉のために、1個のプロセッサのレートに nをかけたものよりかなり小さくなる可能性があることである。よって、我々はマルチプロセッサによって実際にもたらされる総処理能力のより現実的な評価が必要になる。第2の側面はマルチプロセッサの実効サービス・レートは一定ではなく、センターで待っているジョブの数に依存することである。4プロセッサ・システムを考察しよう。理想的には、もし4つ(あるいはそれ以上の)ジョブがそのセンターでサービスを望めば、4つのプロセッサは全てビジーになることが出来、そのセンターの実効サービス・レートはその最大レートになる。しかし、もし4つより少ないジョブがそのセンターで待っているならば、プロセッサのいくつかはアイドルになり、よって実効サービス・レートはそれに応じて縮小される。
 これらの問題の最初のもの、すなわち、実効サービス・レートを見積もる際にプロセッサの相互の干渉を考慮に入れる問題、は、考察している構成の、業界紙やベンダによって通常提供されるベンチマークのような、ベンチマークスタディの結果を用いて最もよく解かれる。例えば、そのような数字は、IBM 3033MP(密結合デュアル・プロセッサ)は、MVSオペレーティング・システムのもとでTSOとバッチの混ざった作業負荷を処理する場合、1台の3033プロセッサの約1.7倍であることを示すことだろう。マルチプロセッサのパワーはその上で走るオペレーティング・システムにかなり依存して変化し得るので、標準の見積もりの信頼性が高いことはあまりありそうにない。入力パラメータが高い信頼度で知られていないような全ての場合において、適切な範囲を表しているいくつかの実効サービス・レートについてモデルを評価し、それによってその値が問題であるパラメータに対する結果の感度を評価することは、優れたやり方である。
 これらの問題の2番目、つまり、マルチプロセッサの実効サービス・レートにおける変動を、プロセッサのサービスを必要とするジョブの数の関数として考慮する問題、は、フロー等価サービス・センターを用いて容易に解かれる。図11.1は4プロセッサ・システムについて実効サービス・レートを待ち行列長の関数としてグラフ化している。サービス・レートは4つのプロセッサが全てビジーになるまで待ち行列長とともに増加し、その後、プロセッサをめぐって争うジョブの数の増加は実効サービス・レートの増加をもたらさなくなる。点線はサービス・レートの理論的な増加を示し、実践は競合の効果を表している。マルチプロセッサを表すために用いるフロー等価サービス・センターは、そこで見ることが出来る可能な全ての客個体数について実効サービス・レートを与えることによってパラメータ値を決定される。個体数とサービス・レートの組のこの集合は本質的に図11.1に示した曲線の表による表現である。

  • 図11.1: 4プロセッサ・システムのサービス・レート関数


11.3.優先度スケジューリング規律(1)」に続きます。