11.6.高変動のサービス時間を持つFCFSスケジューリング(1):Quantitative System Performance

11.5.クラス依存平均サービス時間を持つFCFSスケジューリング」の続きです。(目次はこちら

11.6.高変動のサービス時間を持つFCFSスケジューリング

 前のセクションで我々は、1訪問あたりの平均サービス時間が客クラスによって異なるようなFCFSセンターについての解法を提示した。この技法はモデルが分離可能であるために要求される諸制約(セクション7.2セクション7.5を参照)のために必要であり、よって第7章の標準アルゴリズムを用いて解析するのに素直に従った。このセクションで我々はサービス時間均一性の仮定によって課せられた、分離可能ネットワークのもう一つの制約(セクション7.5参照)を克服する技法を提示する。この仮定は任意のサービス・センターからの客の完了のレートはモデル全体の状態(つまり他の客の位置)に依存しないと述べている。大部分のコンピュータ・システムのモデル化の際、この仮定のいかなる違反も顕著な誤差をもたらさない。よって、提示する技法を使用する必要があるのは普通でない状況のみである。(この技法はより単純な分離可能モデルより多くのパラメータの値を要求し、よってパラメータ値決定の工数が増加するので我々はこの技法の必要以上の使用を抑えている。)
 経験則として、個々のFCFSセンターでの1訪問あたりのサービス時間の変動が中程度の場合、つまり、サービス時間の平均と標準偏差が同程度の場合、分離可能モデルが充分に機能することを我々は期待出来る。この技法の使用が精度の目だった改善をもたらすようなセンターは、大部分のサービス・バースト(1回の訪問時に得られるサービス)が同程度の期間であって、ずっと長い期間のバーストがたまにある、というふうな特徴を持っている。一例として、バッチ・システムではCPUサービス量子はコンテキスト・スイッチ・オーバヘッドを削減するために非常に長く設定してある場合がある。これはファイル・アクセスの間に多くの短いサービス・バーストを、そしてその後に一旦データを得てしまえば1個の長い計算期間を、もたらす可能性がある。このような状況では分離可能モデルは、モデル内の平均サービス時間に測定されたシステムの平均を設定したとしても、たまに発生する非常に長いサービス・バーストの性能への影響を捉えないであろう。これらの長いバーストの影響はシステムで発生する待ちの量を増加させる。よって、これらの状況で分離可能モデルを用いた場合、分離可能モデルは楽観的な結果を与える傾向がある。
 その他の場合と同じように、我々はMVA滞在時間方程式を修正し、次に基本MVA繰返しの中で修正した方程式を用いることによる解法を提案する。滞在時間はサービス時間と待ち時間からなる。クラスc客がサービス・センターkに到着することを考察しよう。1訪問あたりのサービス時間(S_{c,k})は入力パラメータであり、よって問題を示していない。我々はFCFSセンターを考察しているので、すでにセンターにいる全てのジョブのための待ち時間が要求される。到着するジョブは、キューにあるがまだサービス中ではない個々のクラスi客について平均S_{i,k}時間単位待たなければならない。最後に、到着した客は現在サービス中の客が終了するのを待たなければならない。これを以下のようにまとめることが出来る。

  • R_{c,k}(\vec{I}){\approx}
  • V_{c,k}\left[S_{c,k}+\Bigsum_{i=1}^CS_{i,k}\left[Q_{i,k}(\vec{I-1_c})-U_{i,k}(\vec{I-1_c})\right]+\Bigsum_{j=1}^Cr_{j,k}U_{j,k}(\vec{I-1_c})\right]

ただしr_{j,k}は、センターkへのクラスcの到着のたびにサービス中であることが見い出されるクラスj客の完了までの平均時間である。この方程式の最初の項はクラスcジョブの固有サービス要求時間を表している。2番目の項はキュー内にいる(Q_{i,k}(\vec{I-1_c})の項)がサービス中ではない(よって-U_{1,k}(\vec{I-1_c})項)客を待つのにかかる総時間を近似している。U_{j,k}(\vec{I-1_c})を、到着したクラスc客が、クラスj客がサービス中であるのを見い出す回数の割合と解釈することによって、最終項はサービス中の客が完了するのを待つ時間を近似する。


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