11.6.高変動のサービス時間を持つFCFSスケジューリング(2):Quantitative System Performance

11.6.高変動のサービス時間を持つFCFSスケジューリング(1)」の続きです。(目次はこちら

 この方程式は、サービス時間の変動が高いFCFSセンターを含むモデルのためのMVA風解析手法の基礎である。残っている問題はしばしば、クラスjのセンターkにおける残りサービス時間と呼ばれる、r_{j,k}を見積もることである。これを行うために我々は、クラスjサービス期間の任意の時点でクラスcジョブは等しい確率で到着する(つまり、クラスcの到着はクラスjサービス期間についてランダムに発生する)と仮定する。この単純化を用いてさえ、r_{j,k}の適切な選択は即座に明白にはならない。直感的にr_{j,k}=S_{j,k}/2と推測する人がいるかもしれない。しかし、実際にはこれはセンターkへの全ての訪問のクラスjサービス時間が厳密に等しい時のみ起こる(可能な最小の残りサービス時間を表す)極端な値である。我々の仮定のもとで、残りサービス時間は以下で与えられる。

  • r_{j,k}=\frac{S_{j,k}}{2}+\frac{variance}{2S_{j,k}}

ただしvarianceはクラスjのセンターkへの1回の訪問あたりのサービス時間の変動である。よって、実際の残りは少なくとも平均サービス時間の半分である(というのは変動は常に非負の値であるから)。一例として、クラスjが長さ90の個々のサービス・バーストについて10個の長さ1のバーストを経験するとしよう。すると到着した客は1つの長いバーストの期間に任意の短いバーストの期間の9倍の確率で到着する。よって、残りサービス時間は 0.1×5+0.9×45=41である。対照的に、平均サービス時間は\frac{10}{11}{\times}1+\frac{1}{11}{\times}90=9.09 である。この驚くべき状況は、客は、ずっと多くのバーストが長いのではなくて短い場合であってさえ、短いバーストより長いバーストの間にずっと多い確率で到着するということから来ている。

  • モデル入力
    • N=10Z=10
      • (時間の単位は全て秒)
  • 応答時間
      • (時間の単位は全て秒)
  • 表11.3 高変動のサービス時間を持つFCFS


 表11.3はこの技法の使用例を示している。我々は4台のディスクと1台のCPUを持つシステムを考察する。端末タイプの単一クラスが存在する。表はCPUサービス時間の5つの異なる程度の変動についてユーザが経験する応答時間を示している。我々は結果を3つの異なる仕方で得ている。すなわち、CPUサービス時間の高変動を無視し平均値解析を直接適用することによって(表中の「MVA」)と、このセクションで提案したアルゴリズムを用いることによって(表中の「セクション11.6」)と、システムをシミュレートすることによって(表中の「シミュレーション」)とである。
 その結果は、サービス時間の変動の性能への影響はこの変動が増加するにつれてより厳しくなることを示している。このセクションで提案した方法は、変動の増加につれて起こる応答時間の悪化を反映している。
 この技法は、我々が考察するセンターが1訪問あたりのサービス時間が異常に高い場合、あるいは低い場合のいずれにも用いることが出来ることに注意しよう。FCFSサービス・センターで低い変動を持つサービス時間分布もまたやっかいであり得るが、そのモデル精度への潜在的な影響はより限られている。分離可能モデルは低変動FCFSセンターを持つシステムについて若干悲観的である傾向がある。


11.7.まとめ」に続きます。