奇妙な体験

奇妙な体験をした。あらかじめ断っておくと、これはフィクションではないです。本当のことです。
今日、私が志摩のほうを足早に放浪して、午後2時ぐらいに、家の近くの無人駅に降りたところ、やたらにカラスの鳴き声が大きい。というかすさまじい警戒の鳴き声を出している。2羽が頭上で鳴いているのを感じたが目に飛び込んできたのは、電話ボックスの中でもがいているもう1羽のカラスだった。公衆電話のボックスがこの駅のプラットフォームにはあるのですが、そしてそれが透明なボックスなのですが、その中にカラスがいるのです。外に出ようともがいてパニックになっているのです。私は、無人駅で私のほかには誰もいない、ということもあって、すぐにボックスのドアを開けて
「こっちだよ! こっちにこいよ!」
とカラスに言ったのですが、畜生の悲しさ、ドアとは正反対の方向に向かって脱出しようとしてガラスにぶつかってばかりを繰り返していました。何か物を使ってこちらに振り向かせようと思ったのですが適当なものがありません。そのうちにそのカラスがバランスを崩して、よろめいたところ、その時にドアが開いているのが目に入ったのでしょう。ものすごい勢いで出ていって、線路の向こうの町工場のような建物のテッペンに飛んでいって止まりました。しばらく、そこで気持を落ち着けるように2,3鳴いたあと、また私のほうへ向かって、というか、私の頭上を越えて行ってしまいました。そして遠くの電柱に止まりました。
 ところで頭上で騒いでいた2羽のカラスは、まだ、頭上の電柱の上でアー、アー鳴いていました。私は、まわりに誰もいないこともあって、2羽のカラスに話しかけました。
「いったい、何があったんだよ。」
2羽のカラスは交互にアー、アー叫んで、私に説明しているようでしたが、悲しいことに私はカラスの言葉が分かりません。
「だから、何が・・・」
もう一度、カラス達は交互にアー、アー鳴いているのですが、そのうちに落ち着いてきたのか、黙ってしまいました。


 それにしてもどうしてカラスが電話ボックスの中に閉じ込められたのか不思議です。普段はドアはしまっているはずなので、その中に入ることがあるはずがありません。誰かがイタズラで入れたとしても、あの野生のカラスを捕まえることは容易でないように思えます。誰かが電話ボックスから出た時に偶然、カラスが飛び込んだのでしょうか? 不思議な話です。


・・・・カラスの恩返し、ってあるかな・・・・