13.1.導入:Quantitative System Performance

12.9.演習」の続きです。( 目次はこちら

13.1. 導入


 第12章で記述したように、我々はベースライン・システムの待ち行列ネットワーク・モデルを作り、妥当性を確認したので、これらのモデルは想定される作業負荷の、ハードウェアの、運用方針とシステム・ソフトウェアの修正の性能への影響を予測するのに使用出来る。この章で我々は妥当性確認されたモデルの入力を変えることでそのような修正をどのように表現するかを見ていく。その結果得られる性能予測の精度と実用性は3つのファクタに依存する。

  • ベースライン・モデルがどれだけよく妥当性確認されているか:ベースライン・モデルの構成と妥当性確認は第12章で検討された。
  • 修正がどれほど正確に予測されるか:システムとその作業負荷の変化を予測することは組織上のマネジメント層が直面する困難な仕事である。それはこの本の範囲外にある。
  • 予期される修正がモデル入力の変更として、どれだけよく表現されるか:これはこの章の主題である。


 一般に、システム修正は主要効果と副次効果の両方を持っている。例えば、CPUアップグレードは個々のユーザのCPUサービス要求時間(命令数ではなくて秒に関して)を短縮する主要効果を持つが、個々のユーザがスワップされる回数を平均で変化させるというような、1つ以上の副次効果を持つかもしれない。多くの修正において主要効果を予測し表現することは比較的簡単であるが、副次効果を予測し、よって数量化し表現することはより難しいことを我々は見ることになる。この理由により、いくつかの選択肢が考えられるような性能予測に成功するスタディはしばしば以下の形式を取る。

  • 最初に、個々の選択肢が、その主要効果だけを表現することによって調査される。これは素早く実行出来る。
  • その結果は若干の選択が、さらに検討するのに値しないことを示すであろう。これらの選択肢は捨てられる。
  • 残りの選択肢はより詳細に、主要効果と同様に副次効果にも注意を払って調査される。


 この章の構成はこのシナリオを反映している。セクション13.213.313.4で我々はそれぞれ、作業負荷の、ハードウェアの、運用方針とシステム・ソフトウェアの影響をモデル化することを検討する。我々はこれらのセクションで修正の主要効果を表現することに集中するが、特定のタイプの修正に特有な若干の副次効果も検討する。
 実際には、2つ以上の修正がしばしば一緒に発生する。例えば、もしトランザクション処理量の増加(作業負荷の修正)が予想されるならば、人は性能をCPUがアップグレードされる(ハードウェアの修正)という仮定のもとで予測したいであろう。記述を明快にするために我々はそのような変更を別々に議論することにする。複数の修正の効果を表現するために、対応するモデル入力変更は逐次的に適用出来る。
 セクション13.5で我々は第部分のタイプの修正に共通である若干の副次効果を議論する。一例は可変オーバヘッド(例えば、スワッピングによるCPUとI/Oのオーバヘッド)の量の変化である。それはさまざまな修正に付随して起こる。
 最後に、セクション13.6では、さまざまな修正の性能への影響を予測するために待ち行列ネットワーク・モデルが用いられた3つの関連するケーススタディを記述する。各々のケースでは、実際に修正が実装された後に、予測の精度が評価された。これらの3つのケーススタディは、モデル化サイクルを提示したセクション2.2で我々が議論したIBM計算施設群についての2つのスタディに気持ちの上では似ている。この点でセクション2.2を見直すことは無駄ではない。


13.2.作業負荷の変更」に続きます。