怪物の解剖学 種村季弘

これは私が随分お世話になった本だが、今の世間では忘れ去られた本になっているようだ。確かに表面的な知識ならばウェブのほうがずっと詳しく紹介しているだろうが、あなた、少し欠けているものがあるんですよ、っと、誰に話しているんだろう私は。


実はですね、この本のアマゾンでのコメントを見て悲しくなっちゃって・・・。

5つ星のうち 2.0 諸説の紹介だが古い, 2010/3/5 By 虹鱒 (NIPPON)

いまいちです!


高山宏が『近代文化史入門』でそれなりに好意的に取り上げていたので読んでみたのですが、いまいちでした。
内容としては様々な怪物(人造、天然?問わず)の紹介、高名な人物(デカルトなど)のオカルティックなエピソード紹介、
といったところですが、内容としてはすでに古いものが多く、また非常に情緒的です。

当時はともかく、現代において参考になるということは少ないのではないでしょうか?


まっ、今の若い人たちから見たらそうかもしれんけど、当時としては先駆的な作品だったんですよ。・・・・う〜ん、それは時流に乗っていけない年寄りの繰言か・・・。でもね、最近のオカルト知識を見ていると、何かどんどん枝葉末節にいっているような気がするんですね。教説よりもその背後にある人間の、こんな奇想を展開せざるを得ない業(ごう)みたいなものを自覚することが大切なんじゃないの?・・・・・・


ひさびさに読み返して、この本の中の「ピュグマリオンの恋」が面白かった。これは今の、フィギュアに愛を注ぐオタクの人たちに受け継がれている心情・信条じゃないの? あなたがたも自分たちの心情・信条に歴史的基盤を見出したら、より普遍性を見出すことが出来るのでは? この記事では、オウィディウスの転身物語から始まって、AD2世紀のソフィスト、アンドロスのオノマルコスの演説、江戸川乱歩の「人でなしの恋」、18世紀ドイツのグスタフ・フリードリッヒ・ウィルヘルム・グロースマンの喜劇「ピュグマリオン。フランス物原作による一幕喜劇」、20世紀はポーリーヌ・レアージュの「O嬢の物語」などを登場させてピュグマリオン・コンプレックスの諸相を解明している。


この本は私にとっては「由緒正しいオカルトへの入門書」なのです。はい、「由緒正しいオカルト」というのが語義矛盾ですが。


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