15.6.OSのアルゴリズム:Quantitative System Performance

15.5.データベース並行処理制御(2)」の続きです。(目次はこちら

15.6.OSのアルゴリズム


 OSの設計の間、あるサブシステムを今まで我々が考察したより詳細なレベルでモデル化することを要求するような、極端に微妙な性能の質問が発生する。そのような質問の例は、ページングとスワッピングとプロセッサ・スケジューリングの制御を協調させる複雑なリソース割当てアルゴリズムの設計を含んでいる。
 他方、待ち行列ネットワーク・モデルはこれらの極端に詳細な質問に答えるのには理想的に適しているというわけではない。(幸い、そのような質問が起こるのは非常にまれである!) 他方、待ち行列ネットワーク・モデルは(シミュレーションや実験のような)他の選択肢である技法に対する、可能な限りそれらを使用する強い動機があるという非常なメリットを提供する。しばしば、その解法は第8章で記述したようなハイブリッド・モデル化を利用することである。
 このセクションで我々はIBMのMVS OSのハイブリッド・モデルを記述する。このモデルはMVSシステム・リソース・マネージャ(SRM)の内部の詳細を研究するために設計された。MVSの下では、個々の実装はその作業負荷要素を性能グループに分類分けする。個々の性能グループ内では、客はサービスが獲得された時に性能期間の並びを通過する。個々の性能期間について、サービス目標が決められている。客はさまざまなリソースで、自分の現在の性能期間について指定されたサービス目標に基づくレートで、サービスを受ける。(例えば、客のスワッピングへの感受性は客の現在の性能期間に依存する。) さらに、さまざまなリソースの稼動率について目標が決められている。これらの目標はスケジューリング決定に追加の制約を課す。適切な長期と短期のリソース割当て決定を行ってこれらの多くの目標の調停を行うのはSRMの仕事である。
 図15.5はSRMの内部アルゴリズムを表現することを可能にする2階層ハイブリッド・モデルの構造を示している。2つの作業負荷要素、TSO(タイムシェアリング)とバッチ、が存在する。2つの主要なSRMモジュールが明示的に表されている。スワップ解析は個々の客の達成されたサービスを追跡しスワップが実行されるべきかどうかを決定する。リソース・モニタは目標マルチプログラミング・レベルを計算し、必要ならばスワップ解析を呼び出し、さまざまな統計値を収集する。これらの統計値はOSのオーバヘッド・サービス要求時間を決定するためにオーバヘッド・サブモデルの中で使用される。高レベル・モデルはシミュレーションを用いて評価される。

  • 図15.5 MVS SRMの詳細ハイブリッド・モデル

 低レベル・モデルでは中核サブシステムが表現される。ページング活動は興味のある特定のページング方針の知識を持つサブモデルによって決定される。低レベル・モデルはパートIIIIIからの技法を用いて評価される。
 このモデルのハイブリッド解法は繰り返して進む。高レベル・モデルはマルチプログラミング・ミックスとオーバヘッド・サービス要求を決定し、これらを低レベル・モデルに供給する。低レベル・モデルはスループットと稼動率を決定し、それらは高レベルモデルが次の完了の時刻を計算し、リソース割当てを決定することを可能にする。
 もちろん、SRMの内部アルゴリズムを表現することはそれだけに留まる詳細のレベルではなく、それはキャパシティ計画と性能予測のアプリケーションにとって適切である。やはり、このハイブリッド・モデルはSRMの振る舞いに関する詳細な質問に答えることに成功した。モデルの評価は、純粋なシミュレーションの方法を用いて可能なものより30から100倍も速かった。このモデル化方法はMVSシステムに関する直接の実験において可能であるであろう柔軟性より大きな柔軟性をもたらした。


15.7.まとめ」に続きます。