16.2.4.高級フロントエンド:Quantitative System Performance

16.2.3.ユーザ・インタフェース」の続きです。(目次はこちら

16.2.4.高級フロントエンド


 現実的な規模のシステムについて測定データが与えられると、待ち行列ネットワーク・モデルの入力を計算し入力するのにかなりの時間がかかる。データが大量なため、その過程は間違いを起こし易い。アクションの多くは繰返しである。これらの要因の全ては、既存システムのベースライン・モデルの構築を部分的に自動化するコンピュータ・プログラムに賛成することを強く主張する。これは高級フロントエンド図16.1のレベル4、の一つの主要な例である。高級フロントエンドが非常に有用であるような応用領域の他の例には提案システムの、そしてデータベース・システムの通信ネットワークの性能予測が含まれる。これらを一つ一つ順に触れていく。


既存システムのモデル化
 第12章で我々は既存システムのベースライン・モデルのパラメータ値決定について検討した。確かに、この過程の部分は解析者の側に微妙な判断を要求する。しかし、任意の特定のシステムについて(性能データベース内に指定されたフォーマットで保存された)測定データを待ち行列ネットワーク・モデルの入力に翻訳する際に引き起こされる労力の大部分を自動化することは可能である。
 そのような高級フロントエンドを構築することの実現可能性は待ち行列ネットワーク・モデルの一般的な構造が、システムには依存するが実装にはあまり依存しないという事実に依拠している。例えば、IBM MVSシステムの待ち行列ネットワーク・モデルを構築する際、「性能グループ」を客クラスに結びつけることは理にかなっている。一般に、そのようなフロントエンドはかなり単純なモデルを構築し、次にそれは解析者によって調整される。全体として、時間の節約はかなりのものになり得る。


提案するシステムのモデル化
 提案するシステムの性能予測は第14章で少し詳しく検討された。そこにおいて我々は2つの高級フロントエンドのシンタックスを示した。このアプリケーションのインタフェースはシステム設計者の観点に基づいている。それはアプリケーションの自然な単位を(例えば、ソフトウェア側ではディスク・リード回数の見積りを、ハードウェア側では転送レートを)扱い、それらを待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアの中核ルーチンに受入れ可能な形に翻訳する。


データベース・システムのモデル化
 データベース処理が性能に主要な影響を与えるようなシステムにおいて、特殊化された高級フロントエンドの使用が、便利に扱うことが出来る性能の質問の範囲を拡張することが出来る。
 顕著なデータベース作業負荷要素の存在は、パートIIIIIで記述された技法の、性能を予測する問題への適用の可能性を失わせない。実際、初期に記述されたケーススタディのいくつかは、データベース活動が顕著であるようなシステムを扱っている。しかし、データベース・システムの文脈で発生するが、一般的な待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアによって提供されるインタフェースを用いて便利に扱うことが出来ないような性能の質問が存在する。
 データベース・システムの効率的な運用は以下を含む多くの設計判断に依存する。

  • ファイルの集合としての論理データ・モデルの表現
  • レコードを互いに関係付けるリンクの仕様
  • ファイル内のある属性についてさまざまな値を持つレコードへのアクセスを促進するインデックスの選択
  • クエリー処理戦略の選択
  • 主メモリ内とさまざまな保管デバイス上へのインデックスとファイルの配置
  • さまざまな目的のためのバッファ・スペースの割当て

これらの判断の全てがデータベース・トランザクションのサービス要求時間にかなりの影響を与える。データベース・システム用の高級フロントエンドの目的はこれらのような判断の調査をサポートすることである。
 大部分のデータベース・システムでは、少数のトランザクション・タイプが支配的である。もし我々がそのようなトランザクション・タイプの各々をモデル内の客クラスとして表現するならば、クラスはその負荷強度と、データベース内の項目へのアクセスの通常のパターンによって特徴づけることが出来る。フロントエンドは1トランザクションあたりの物理ブロック・アクセス回数を、論理データ項目へのアクセスのパターンから、ファイルとファイル間のリンクとしての論理データベースの表現を考慮することによって計算することが出来る。クエリーの処理の際、操作が行われる順序(クエリー処理戦略)と選択される属性上のインデックスの存在もまたブロック・アクセス回数に影響を与える。最後に、データ配置判断は、物理的データ転送を要求するブロック・アクセスの割合を決定する。よって、データベース環境の特徴となされた設計判断を考慮することによって、フロントエンドはトランザクション・タイプの高級仕様を、標準の待ち行列ネットワーク・モデル化パッケージへの入力に適した仕様へ変換することが出来る。
 特定のデータベース管理システムは特定の制約を課す。例えば、IMSとシステム2000はファイルのリンクとインデックス付与の特定の方法をサポートし、(優先度仕様やバッファ・スペースのさまざまな使用目的への割当てのような)特定のチューニング・パラメータを提供する。特定のデータベース・システム用に調整された高級フロントエンドは、システム内部で決定された全ての決断をフロントエンドに構築することが出来るので解析者にとって最も便利である。


コンピュータ通信ネットワークのモデル化
 コンピュータ通信ネットワークの設計に際して多くの課題を考慮する必要がある。ネットワークのバンド幅、多重化と集中化の戦略、ネットワーク・プロトコル層、フロー制御方針、ルーティング戦略、バッファ戦略である。ネットワーク設計者は、提案するネットワークが、受入れ可能なレベルの性能を提供しつつ、予測される負荷強度を処理出来るかどうかを知ることに興味がある。このアプリケーション用のフロントエンドは、クラスタ・コントローラやライン速度、ホスト/サテライト・トポロジープロトコルといったエンティティの用語でシステム記述を受け入れる。これらは待ち行列ネットワーク・モデルのためにさまざまなセンター(例えば、通信コントローラ)でのサービス要求時間に変換される。第8章で記述したような階層的モデル化がここでは有用である。


16.3.例」に続きます。