流れの分岐(別解)

では、「不定個の同一分布独立確率変数の和の平均」で求めた式(7)(ここでは式(1)と番号を振り直します)

  • E[Y]=E[X]E[N]・・・・(1)

と「不定個の同一分布独立確率変数の和の分散」で求めた式(8)(ここでは式(2)と番号を振り直します)

  • V[Y]=E[N]V[X]+V[N]E[X]^2・・・・(2)

を使って以下の問題を解いてみましょう。ただし、

  • Y=\Bigsum_{k=1}^NX_k・・・・(3)

であり、NX_kはともに確率変数であり、X_kは互いに独立で同一の確率分布を持つのでした。


問題

ある出発する流れを考える。これをp:(1-p)の割合で流れAとBに分ける。ただし分け方は確率的である。つまり、出発するジョブはそれぞれ独立に確率pで流れAに属し、確率1-pで流れBに属する。元の流れのジョブの出発間隔時間を確率変数Xで表わす。Xの平均値をE(X)、分散をVar(X)、2乗変動係数c_X^2で表わす。流れAのジョブの出発間隔時間を確率変数Yで表わす。この時Yの平均値E(Y)、分散をVar(Y)、2乗変動係数c_Y^2E(X)Var(X)c_X^2の関係を求める。

これは「流れの分岐」で提示した問題です。ここでは、その時とは異なる解法を示すことになります。



あるジョブ(ジョブI)が流れAに属するとして、その次の流れAに属するジョブ(ジョブII)は、前のジョブから見てN番目であるとします。このNも確率変数になります。ジョブIとジョブIIの間隔を確率変数Yで表します。すると式(3)が成り立ちます。N個のX_kは互いに独立ですので式(1)(2)を使うことが出来ます。まず式(1)から

  • E(Y)=E(N)E(X)・・・・(4)

式(2)から

  • Var(Y)=E(N)Var(X)+Var(N)E(X)^2・・・・(5)

です。(単に表記法を変えただけです。) 次にE(N)Var(N)を求めます。そのためにNがどのような確率変数であるかを考えます。
ジョブIIがジョブIの

  • すぐ後(1番目)である確率はp
  • 2番目である確率は(1-p)p
  • 3番目である確率は(1-p)^2p
  • ・・・・・・・
  • k番目である確率は(1-p)^{k-1}p

ですから、Nkである確率をp_kで表すと

  • p_k=(1-p)^{k-1}p・・・・(6)

よって

  • E(N)=\Bigsum_{k=1}^{\infty}kp_k=\Bigsum_{k=1}^{\infty}k(1-p)^{k-1}p・・・・(7)

式(7)の右辺については「補足」の式(2)(ここでは式(8)と番号を振り直します)

  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}kr^{k-1}=\frac{1}{(1-r)^2}・・・・(8)

を用いると

  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}k(1-p)^{k-1}p=\frac{1}{p^2}p=\frac{1}{p}

となるので結局

  • E(N)=\frac{1}{p}・・・・(9)

となります。
次に

  • E(N^2)=\Bigsum_{k=1}^{\infty}k^2p_k=\Bigsum_{k=1}^{\infty}k^2(1-p)^{k-1}p・・・・(10)

式(10)の右辺については「補足」の式(3)(ここでは式(11)と番号を振り直します)

  • \Bigsum_{k=2}^{\infty}k(k-1)r^{k-2}=\frac{2}{(1-r)^3}・・・・(11)

を用いると変形できるのですが式(11)自体を少々変形する必要があります。式(11)から

  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}(k+1)kr^{k-1}=\frac{2}{(1-r)^3}

よって

  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}k^2r^{k-1}+\Bigsum_{k=1}^{\infty}kr^{k-1}=\frac{2}{(1-r)^3}
  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}k^2r^{k-1}=\frac{2}{(1-r)^3}-\Bigsum_{k=1}^{\infty}kr^{k-1}

ここで式(8)を用いると

  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}k^2r^{k-1}=\frac{2}{(1-r)^3}-\frac{1}{(1-r)^2}・・・・(12)

式(12)を式(10)に用いて

  • E(N^2)=\left(\frac{2}{p^3}-\frac{1}{p^2}\right)p

よって

  • E(N^2)=\frac{2}{p^2}-\frac{1}{p}・・・・(13)

ところで

  • Var(N)=E(N^2)-E(N)^2

なので

  • Var(N)=\frac{2}{p^2}-\frac{1}{p}-\frac{1}{p^2}=\frac{1}{p^2}-\frac{1}{p}=\frac{1-p}{p^2}

よって

  • Var(N)=\frac{1-p}{p^2}・・・・(14)

式(4)に式(9)を代入して

  • E(Y)=\frac{E(X)}{p}・・・・(15)

これでE(Y)が求まりました。次にVar(Y)は式(5)に式(9)(14)を代入して

  • Var(Y)=\frac{Var(X)}{p}+\frac{1-p}{p^2}E(X)^2・・・・(16)

となります。c_Y^2については式(15)と(16)から求めることが出来ますが、これはすでに「流れの分岐」で示しましたのでそちらを参照下さい。