リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(9)

リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(8)」の最後では、2台の装置の処理開始時刻がちょうどt_e/2ズレている、という仮定が不自然であることを述べました。しかし、2台の装置の処理開始時刻がちょうどt_e/2ズレていなくても実は、2台の装置の処理開始時刻がちょうどt_e/2ズレている時と平均待ち時間はあまり違わないのではないかと思いました。つまりガントチャートで装置の状況を表すと

のような場合です。この様子を1台の装置に代用させて

のような処理時間を持つ1台の装置を考えることが出来ます。この場合、この仮想的な装置は大小2つの処理時間を持つことになります。つまりc_eはゼロよりも大きくなります。最初は、このことによって平均待ち時間は長くなるのではないか、と思いました。しかし、この場合でもt_eの間に必ず2つのジョブが処理完了する、という規則性は保たれており、平均待ち時間を考える際にはこの規則性を考慮して、2台の装置の処理開始時刻がちょうどt_e/2ズレている時と平均待ち時間はあまり変わらない、と考えられるのではないか、と思いました。この点ももう少し明確に記述する必要があります。

  • 最初、この仮想的な装置の処理時間が変動することからKingmanの近似式
    • CT_q\appro\left(\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\right)\frac{u}{1-u}t_e・・・・(1)
  • を適用して、平均待ち時間が、2台の装置の処理開始時刻がちょうどt_e/2ズレている場合より長くなることを予想したのですが、このKingmanの近似式は毎回の処理時間が互いに独立である場合を想定しているのでした。ですから今の場合、Kingmanの近似式を用いることは適切ではありません。


もし上のように考えることが正しいのであれば、2台の装置の処理開始時刻のズレ量を気にすることなく、

  • 装置が全部空いていないという条件下でのジョブの待ち時間が処理時間t_eのM/D/2待ち行列と処理時間t_e/2のM/D/1待ち行列ではほぼ同じである。

つまり

  • \hat{CT}_{q(M/D/2,t_e)}{\approx}\hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/2)}・・・・(2)

ということが出来ます。さらにこの考え方を装置がs台の場合に拡張することが出来ます。2台の場合と同様に考えていけば、

  • 装置が全部空いていないという条件下でのジョブの待ち時間が処理時間t_eのM/D/s待ち行列と処理時間t_e/sのM/D/1待ち行列ではほぼ同じである。

つまり

  • \hat{CT}_{q(M/D/s,t_e)}{\approx}\hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/s)}・・・・(3)

が言えることになります。