リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(8)

リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(7) 」では、M/D/2待ち行列について、装置が2台とも空いていないと仮定した時には、処理時間t_eのM/D/2待ち行列と処理時間t_e/2のM/D/1待ち行列の振舞いが等価である、と考えました。このことはどう考えたらよいのでしょうか?


私が考えたのは、装置が全部空いていないという条件下でのジョブの待ち時間が処理時間t_eのM/D/2待ち行列と処理時間t_e/2のM/D/1待ち行列では同じである、ということだと解釈しました。ここをもう少し理論的に述べることが出来ればよいのですが・・・・。装置が全部空いていないという条件下でのジョブの平均待ち時間をそれぞれ\hat{CT}_{q(M/D/2,t_e)}\hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/2)}で表すことにします。そして今までの考察から以下が成り立ちます。

  • \hat{CT}_{q(M/D/2,t_e)}=\hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/2)}・・・・(1)

そして\hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/2)}については計算出来ます。まず

  • CT_{q(M/D/1,t_e/2)}=\frac{1}{2}\frac{u}{1-u}\frac{t_e}{2}

つまり

  • CT_{q(M/D/1,t_e/2)}=\frac{1}{4}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(2)

です。ところで装置が全部空いていない確率は(全部といっても装置は1台なので)uです。ということは、

  • \hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/2)}=\frac{1}{4}\frac{u}{1-u}t_e{\times}\frac{1}{u}

つまり

  • \hat{CT}_{q(M/D/1,t_e/2)}=\frac{1}{4}\frac{1}{1-u}t_e・・・・(3)

ということになります。式(1)と式(3)から

  • \hat{CT}_{q(M/D/2,t_e)}=\frac{1}{4}\frac{1}{1-u}t_e・・・・(4)

ところで2台の装置が全てふさがっている確率は\Pi_{M/D/2}であるので

  • {CT_{q(M/D/2,t_e)}=\frac{1}{4}\frac{\Pi_{M/D/2}}{1-u}t_e・・・・(5)

そして

  • \Pi_{M/D/2}{\approx}\Pi_{M/M/2}・・・・(6)

なので

  • {CT_{q(M/D/2,t_e)}{\approx}\frac{1}{4}\frac{\Pi_{M/M/2}}{1-u}t_e・・・・(7)

ところで「リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(6)」の式(8)

  • CT_{q(M/M/s)}=\frac{\Pi_{(M/M/s)}}{(1-u)s}t_e・・・・(8)

を用いれば式(7)は

  • {CT_{q(M/D/2,t_e)}{\approx}\frac{1}{2}CT_{q(M/M/2,t_e)}・・・・(9)

となり、リー・ロントンの近似式が成立します。


しかし、リー・ロントンの近似式の根拠を示すためには、これを一般のsの場合に拡張する必要がありますし、もうひとつ、2台の装置の処理開始時刻がちょうどt_e/2ズレている、という不自然な仮定を取り除く必要があります。