M/G/sの待ち確率Πの近似(6)

M/G/sの待ち確率Πの近似(4)」の最後で、「これから何とかしてM/D/2待ち行列p(0)p(1)を求め」ると書き、次に「M/G/sの待ち確率Πの近似(5)」で「実はこれがうまくいっていません。」と書きました。いまや「Excelによる、GI/D/s待ち行列の簡易シミュレート」でM/D/2をシミュレートすることが出来るようになりました。これを用いれば、(ちょっと工夫がいりますが)M/D/2待ち行列p(0)p(1)のだいたいの値を求めることが出来ます。その結果を下のグラフに示します。

  • グラフ1 p(0)とp(1)


この結果をM/M/2の場合のp(0)p(1)と比較してみましょう。「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2) 」の式(14)から

  • p(0)=\frac{1}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(1)

でした。今、考えているのはs=2ですから、式(1)にs=2を代入して

  • p(0)=\frac{1}{1+2u+\frac{(2u)^2}{2!(1-u)}}=\frac{1}{1+2u+\frac{2u^2}{1-u}}
    • =\frac{1-u}{(1+2u)(1-u)+2u^2}=\frac{1-u}{1+2u-u-2u^2+2u^2}=\frac{1-u}{1+u}

よって

  • p(0)=\frac{1-u}{1+u}・・・・(2)

次に

  • p(1)=2up(0)・・・・(3)

でしたから(「M/G/sの待ち確率Πの近似(4)」の式8参照)、

  • p(1)=\frac{2u(1-u)}{1+u}・・・・(4)

となります。
これらを上のグラフに書き加えると下のようになります。

  • グラフ2 p(0)とp(1)


このグラフから分かるようにM/D/2M/M/2ではp(0)p(1)の値はほとんど同じです。


\Piはどちらも

  • \Pi=1-p(0)-p(1)

で求めることが出来るので、求めた結果をグラフにすると

  • グラフ3 Π


非常によい近似となっていることが分かります。これで「M/G/sの待ち確率Πの近似(5)」で言えなかった

  • \Pi_{M/D/2}{\approx}\Pi_{M/M/2}・・・・(5)

が言えることになりました(解析的に求めたのではなくてシミュレーション結果として求めたのですが)。さて、M/G/sG(装置の処理時間の分布)がポアソン分布に近づけば近づくほど、その\Piは、つまり\Pi_{M/G/s}\Pi_{M/M/s}に近づくはずです。また、M/D/sにおいてsが大きくなればなるほど、ジョブが待たされずに処理される確率が増え、

の精度が上がり(「M/G/sの待ち確率Πの近似(4)」参照)

  • \Pi_{M/G/s}\approx\Pi_{M/M/s}・・・・(7)

の精度が上がります。
M/D/2ですら式(7)の精度が高かったわけですから、一般のM/G/sについてはもっと精度高く(7)が成り立つことになります。よって、一般のM/G/sについて

  • \Pi_{M/G/s}\approx\Pi_{M/M/s}

が言えることになります。