D/M/1の確率分布の変化(2)

D/M/1の確率分布の変化(1)」の最後で求めた式(7)

  • \frac{p(j,t)}{p(j,0)}=\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}t\right)・・・・(7)

の右辺を

  • r(t)=\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}t\right)・・・・(8)

とおいて、このr(t)の性質を少し調べてみます。j{\ge}1であるjについて

  • \frac{p(j,t)}{p(j,0)}=r(t)・・・・(9)

が成り立つのでした。
まず、r(0)を求めてみます。式(9)から考えれば当然r(0)=1となるはずです。そのことを式(8)で確かめてみます。式(8)から

  • r(0)=\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}{\times}0\right)=\exp(0)=1

となり、予想通りr(0)=1となりました。次に、r(T)を求めてみます。式(8)から

  • r(T)=\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}T\right)・・・・(9)

となりますが、「D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(1)」の式(1)(ここでは番号を振り直して式(10)とします)

  • T=\frac{t_e}{u}・・・・(10)

を用いれば

  • r(T)=\exp\left(-\frac{1-b}{u}\right)・・・・(11)

となります。ところで、「D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(2)」の式(16)(ここでは番号を振り直して式(12)とします)

  • \frac{1}{b}\exp\left(\frac{b}{u}\right)=\exp\left(\frac{1}{u}\right)・・・・(12)

から

  • \frac{1}{b}=\frac{\exp\left(\frac{1}{u}\right)}{\exp\left(\frac{b}{u}\right)}
    • \frac{1}{b}=\exp\left(\frac{1-b}{u}\right)

よって

  • b=\exp\left(-\frac{1-b}{u}\right)・・・・(13)

これを式(11)の右辺に用いると

  • r(T)=b・・・・(14)

となります。式(14)と式(9)により

  • \frac{p(j,T)}{p(j,0)}=b・・・・(15)

となりますが、これを変形すると

  • p(j,T)=bp(j,0)

です。「D/M/1の確率分布の変化(1)」の式(2)から

  • p(j,0)=p(j-1)・・・・(2')

でした。よって

  • p(j,T)=bp(j-1)

となり

  • p(j,T)=p(j)・・・・(16)

となります。つまり、p(j,t)t=0の時p(j-1)であり、時間が経過するにつれて指数関数的に減少し、t=Tの時にp(j)になり、そこでジョブ1個の到着を受けて再びp(j-1)になる、という変化の仕方が分かります。
次にr(t)の時間平均E[r(t)]を求めます。tの範囲が0{\le}t{\le}Tであることに注意すれば

  • E[r(t)]=\frac{1}{T}\Bigint_0^Tr(t)dt・・・・(17)

で求めることが出来ます。式(17)の右辺の積分を計算します。

  • \Bigint_0^Tr(t)dt=\Bigint_0^T\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}t\right)dt=\left[-\frac{t_e}{1-b}\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}t\right)\right]_0^T
    • =\frac{t_e}{1-b}\left[1-\exp\left(-\frac{1-b}{t_e}T\right)\right]

式(10)を用いれば

  • \Bigint_0^Tr(t)dt=\frac{t_e}{1-b}\left[1-\exp\left(-\frac{1-b}{u}\right)\right]

ここで式(13)を用いれば

  • \Bigint_0^Tr(t)dt=\frac{t_e}{1-b}(1-b)=t_e

よって式(17)は

  • E[r(t)]=\frac{1}{T}t_e

もう一度式(10)を用いて

  • E[r(t)]=u・・・・(17)

となります。