M/D/s待ち行列の定常状態分布の近似(1)

リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(9)」では

  • 装置が全部空いていないという条件下でのジョブの待ち時間が処理時間t_eのM/D/s待ち行列と処理時間t_e/sのM/D/1待ち行列ではほぼ同じである。

ということを述べました。M/D/sで「装置が全部空いていない」状態とは、システム内にジョブがs個以上ある状態ということになります。上に述べた文章の意味を考えれば、このような状態の時、p(k)p(k+1)の関係はM/D/1の場合のp(k)p(k+1)の関係とほぼ等しい、ということになります。
M/D/1の定常状態分布の近似式」では

  • p(k+1)=p(k)b・・・・(1)
  • ただしbは定数

(「M/D/1の定常状態分布の近似式」の式(29)参照。ここでは番号を振り直して式(1)としました。)で近似出来ることを
示しました。そうであればM/D/sの場合、k{\ge}sであるようなkについて

  • p(k+1){\approx}p(k)b・・・・(2)

が言えることになります。そうすると

  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}b^{k-s}p(s)・・・・(3)

となり、ジョブが到着した時に装置が全てふさがっているのを見る確率、すなわち待ち確率\Pi_{M/D/s}は、その定義から

  • \Pi_{M/D/s}=\Bigsum_{k=s}^{\infty}p(k){\approx}p(s)\Bigsum_{k=s}^{\infty}b^{k-s}=p(s)\Bigsum_{k=0}^{\infty}b^k
    • =p(s)\frac{1}{1-b}=\frac{p(s)}{1-b}

よって

  • \Pi_{M/D/s}{\approx}\frac{p(s)}{1-b}・・・・(4)

となります。ここから

  • p(s){\approx}(1-b)\Pi_{M/D/s}・・・・(5)

となり、式(5)と式(2)から

  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}b^{k-s}(1-b)\Pi_{M/D/s}・・・・(6)

となります。さらに「M/G/sの待ち確率Πの近似(6)」で示したように

  • \Pi_{M/G/s}{\approx}\Pi_{M/M/s}

なので当然

  • \Pi_{M/D/s}{\approx}\Pi_{M/M/s}・・・・(7)

よって、式(6)は

  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}b^{k-s}(1-b)\Pi_{M/M/s}・・・・(8)

となります。
bの値は「M/D/1の定常状態分布の近似式」の式(39)(ここでは番号を振り直して式(9)とします)にあるように

  • b=\frac{u}{2-u}・・・・(9)

で求めることが出来ます。