クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(3)

クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(2)」の続きです。

  • R=\frac{\min(k_q+2,m_q)p\left(\vec{k(i:-1,q:+2)}\right)}{\min(k_q+1,m_q)p\left(\vec{k(q:+1)}\right)}・・・・(12)

でした。また、

  • \frac{p\left(\vec{k(j:+1)}\right)}{p\left(\vec{k(i:+1)}\right)}=\frac{\min(k_i+1,m_i)m_ju_j}{\min(k_j+1,m_j)m_iu_i}・・・・(7)

でした。
状態\vec{k(i:-1,q:+2)}\vec{k(q:+1)}は間に状態\vec{k(i:-1,q:+1)}を考えると、\vec{k(i:-1,q:+2)}は状態\vec{k(i:-1,q:+1)}よりステーションqのジョブが1個多い状態、\vec{k(q:+1)}は状態\vec{k(i:-1,q:+1)}よりステーションiのジョブが1個多い状態、と見ることが出来るので式(7)が適用出来ます。そこで式(7)を適用すると

  • \frac{p\left(\vec{k(i:-1,q:+2)}\right)}{p\left(\vec(k(q:+1)\right)}=\frac{\min(k_i,m_i)m_qu_q}{\min(k_q+2,m_q)m_iu_i}・・・・(13)

となります。
式(13)を式(12)の右辺に代入すると

  • R=\frac{\min(k_q+2,m_q)}{\min(k_q+1,m_q)}\frac{\min(k_i,m_i)m_qu_q}{\min(k_q+2,m_q)m_iu_i}
  • R=\frac{\min(k_i,m_i)m_qu_q}{\min(k_q+1,m_q)m_iu_i}・・・・(14)

となります。


ここで状態\vec{k}\vec{k(i:-1,q:+1)}を考えます。\vec{k}は状態\vec{k(i:-1)}よりステーションiのジョブが1個多い状態、\vec{k(i:-1,q:+1)}は状態\vec{k(i:-1)}よりステーションqのジョブが1個多い状態、と見ることが出来ます。状態\vec{k}\vec{k(i:-1,q:+1)}はネットワーク全体でジョブ数がw-1の時の状態ですが、式(7)を導く時に考えた道筋と同じ道筋で式(7)と同じ式が成り立つことが分かります。そこで、状態\vec{k}\vec{k(i:-1,q:+1)}について(7)を適用すれば

  • \frac{P\left(\vec{k(i:-1,q:+1)}\right)}{P\left(\vec{k}\right)}=\frac{\min(k_i,m_i)m_qu_q}{\min(k_q+1,m_q)m_iu_i}・・・・(15)

となります。(ネットワーク全体でジョブ数がw-1の時の定常状態確率なのでP()を用いています。)
式(15)を式(14)の右辺に代入すると

  • R=\frac{P\left(\vec{k(i:-1,q:+1)}\right)}{P\left(\vec{k}\right)}・・・・(16)

となります。


これで、以下の定理が証明出来ました。この定理を定理1とします。

  • 定理1
    • ネットワーク全体でジョブがw個ある場合に、ステーションqからステーション1にジョブが到着する際、そのジョブが見る状態が\vec{k}である確率と\vec{k(i:-1,q:+1)}である確率の比は、ネットワーク全体でジョブがw-1個ある場合のP\left(\vec{k}\right)P\left(\vec{k(i:-1,q:+1)}\right)の比に等しい。