クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(1)

Manufacturing Systems Modeling and Analysis

を読んでいて、面白い方法を学んだのでこれを研究してみたいと思います。処理時間が指数分布の複数台の装置からなるワークステーションが複数あるようなクローズド・ネットワークの平均サイクルタイムを求める方法です。研究はこれからじっくり行うとして、今日はその主張する内容を記しておきます。

n個のワークステーションを持ち、w_{Max}個のジョブを持っているクローズド・ネットワークを考える。ワークステーションkc_k個の装置からなり、それらの装置の処理時間は平均t_{ek}の指数分布に従うものとする。ステーションkへの相対到着レートはr_kであるとする。すると、ワークステーションの平均サイクルタイムを得るには以下のアルゴリズムを用いることが出来る。ただし、以下の式に登場する

  • p_k(j,w)はネットワーク全体でw個のジョブがある条件での、ステーションkj個のジョブがある確率である。(他のワークステーションにジョブが何個存在するかは気にかけない。) また
  • CT_k(w)は、ネットワーク全体でw個のジョブがある条件での、ステーションkのサイクルタイム、
  • \lambda_k(w)は、ネットワーク全体でw個のジョブがある条件での、ステーションkへの到着レート

である。


1.

  • k=1,...,nについてp_k(0;0)=1とする。また、w=1とする。

2.

  • k=1,...,nについて、CT_k(w)を以下のように求める。
    • CT_k(w)=t_{ek}\Bigsum_{j=0}^{w-1}\frac{j+1}{\min\{j+1,c_k\}}p_k(j;w-1)・・・・(1)

3.

  • k=1,...,nについてワークステーションへの到着レート\lambda_k(w)を以下のように求める。
    • \lambda_k(w)=\frac{wr_k}{\Bigsum_{i=1}^n\frac{wr_k}{\Bigsum_{i=1}^nr_iCT_i(w)}・・・・(2)
  • もし、w=w_{max}ならば終わり。さもなければ次のステップに進む。

4.

  • k=1,...,nj=1,...wについてp_k(j;w)を以下のように求める。
    • p_k(j;w)=\frac{\lambda_k(w)t_{ek}}{\min\{j,c_k\}}p_k(j-1;w-1)・・・・(3)

5.

  • k=1,...,nについてp_k(0;w)を以下のように求める。
    • p_k(0;w)=1-\Bigsum_{j=1}^wp_k(j;w)・・・・(4)

6.

  • wを1増やしてステップ2に戻る。

この方法の何が興味深いかというと、平均値解析法では、処理時間が指数分布の装置が1台ワークステーションのみから成るクローズド・ネットワークにしか対応出来ないのに対し、この方法ではワークステーション内の装置の台数は1台という制限がないところです。複数台のステーションでも適用出来る汎用性が興味を惹きます。