クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(2)

クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(1)」の続きです。では、なぜこの方法でサイクルタイムを求めることが出来るのか、見ていきます。ところで
Manufacturing Systems Modeling and Analysis

には、この方法の導出方法を記していません。ここからは私の推測になります。


まず、

  • CT_k(w)=t_{ek}\Bigsum_{j=0}^{w-1}\frac{j+1}{\min\{j+1,c_k\}}p_k(j;w-1)・・・・(1)

が成り立つ理由を考えてみます。まず、到着定理

  • クローズド・ジャクソン・ネットワークの到着定理
    • ネットワーク全体にジョブがw個あるとして、あるステーションにジョブが到着する時にそのジョブが見る(自分を除いた)システム全体の状態の確率分布は、このネットワーク全体にジョブがw-1個ある場合の定常状態確率分布に等しい。

から、あるジョブがステーションkに到着する時に、ステーションkに(自分を除いて)ジョブがj個あるのを見る確率はp_k(j;w-1)になります。この時に到着したジョブがステーションkで費やす時間の平均値を考えてみます。するとこれがCT_k(w)になるはずです。
[tex:j

  • 空いている装置が少なくとも1台存在するということですから、到着したジョブは待つことなく直ちに処理を受けます。よってこのジョブがステーションk

で費やす時間の平均値は

    • t_{ek}・・・・(5)
  • になります。

j{\ge}c_kの場合は、

  • 空いている装置はないので到着したジョブは待ちます。到着したジョブの前にはj-c_k個のジョブが処理を待っています。これらのジョブは平均
    • t_{ek}\frac{1}{c_k}
  • に1個ずつ処理されるので、到着したジョブが処理を待つ時間は
    • t_{ek}\frac{j-c_k}{c_k}・・・・(6)
  • になります。到着したジョブの前に処理を待っているジョブがなくなってから、c_k台の装置のうちどれか1台が空く平均時間は、処理時間が指数分布であることを考慮すると
    • t_{ek}\frac{1}{c_k}・・・・(7)
  • になります。その後、この到着したジョブが平均
    • t_{ek}・・・・(8)
  • の処理時間を受けるので、このジョブがステーションkで費やす時間は(6)+(7)+(8)となり
    • t_{ek}\frac{j-c_k}{c_k}+t_{ek}\frac{1}{c_k}+t_{ek}=t_{ek}\frac{j+1}{c_k}・・・・(9)
  • となります。

[tex:j

  • t_{ek}\frac{j+1}{\min(j+1,c_k)}・・・・(9)

となります。このジョブが到着した時にステーションkにジョブがj個ある確率がp(j;w-1)でしたので、このジョブがステーションkで費やす平均時間は

  • \Bigsum_{j=0}^{w-1}\frac{j+1}{\min\{j+1,c_k\}}p_k(j;w-1)

となります。(jw-1より大きくなれないことに注意) これがCT_k(w)に等しいはずですので、式(1)が成り立ちます。