GI/G/s待ち行列の定常状態分布を求めて(5)

GI/G/s待ち行列の定常状態分布を求めて(4)」ではD/D/sの\Omega\Pi_{M/M/s}と大きく異なることを理由に、GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式

  • CT_q(GI/G/s)\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{\Pi_{M/M/s}}{s(1-u)}t_e・・・・(22)

を根拠づけることに失敗した、と結論づけました。しかし、D/D/s待ち行列ではどんなuの値であっても待ち時間が0になるので実は式(1)は成り立っています。というのはD/D/Sでは

  • c_a=0c_e=0

なので式(1)から

  • CT_q(D/D/s)\approx\frac{0+0}{2}\frac{\Pi}{s(1-u)}t_e=0

となるからです。
むしろD/D/sでは、式(19)

  • \Omega_{GI/G/s}{\approx}\Pi_{M/M/s}・・・・(19)

が成り立たない、ということの影響は、他のGI/G/sの場合も式(19)が成り立たない可能性を示唆した点にあります。式(1)を救うためには、例えばD/M/sの場合、式(19)が成り立つかどうか、誤差はどのくらいか、を見極める必要があります。そこで私はここ数週間、D/M/sの時の\Omega、つまり、\Omega_{D/M/s}を求めようといろいろ試行錯誤してきました。その結果、いくつかの知見を得ましたが、結論は式(22)自体を改良する必要があるというものになりました。つまり式(1)をD/M/s待ち行列に適用した場合の結果の精度はあまりよくない、という結果を得たのです。そこで私は別の近似式を提案します。それは

  • CT_q(GI/G/s)\approx\frac{c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u]}{2}\frac{\Pi_{M/M/s}}{s(1-u)}t_e・・・・(23)

です。「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(1)」からはどのようにして式(23)に到達したかを述べていきます。