昔の痛い思い出が教える・・・・(2)

昔の痛い思い出が教える・・・・(1)」の続きです。
では、M/M/sの場合について式(9)(10)

  • [tex:k
    • p(k)\approx\frac{s!(1-u)u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{k!(su)^{s-k}}・・・・(9)
  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}b^{k-s}(1-b)u^{\sqrt{2(s+1)}-1}・・・・(10)
    • ただし
      • b=\frac{(1+c_e^2)u}{2-(1-c_e^2)u}・・・・(4)

を評価してみます。


M/M/sでは式(4)は、c_e=1なので

  • b=u・・・・(11)

となります。よって式(10)は

  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}u^{k-s}(1-u)u^{\sqrt{2(s+1)}-1}・・・・(12)

となります。式(9)は式(9)のままです。

  • [tex:k
    • p(k)\approx\frac{s!(1-u)u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{k!(su)^{s-k}}・・・・(9)

これに実際の値を入れて、その結果を下に示す式(1)(3)での結果、つまりより厳密な計算の結果、と比較してみます。

  • [tex:k
    • p(k)\approx\frac{(su)^k}{k!}p(0)・・・・(1)
    • ただし、p(0)=\frac{1}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(2)
  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}b^{k-s}(1-b)\Pi(M/M/s)・・・・(3)
    • ただし
      • \Pi(M/M/s)=\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(5)

ただし、式(3)はM/M/sの場合、式(11)により

  • k{\ge}sの時
    • p(k){\approx}u^{k-s}(1-u)\Pi(M/M/s)・・・・(13)

となります。
さて、実際にuに適当な値を入れて式(12)と式(13)を計算し、その結果を比較したところ、まあまあ似た値が導かれるのですが、式(1)と式(9)を比較すると大きく値が違っていました。特にp(0)の値が大きく異なっています。以下のグラフに、uの値を変えた時の式(9)によるp(0)の値を示します。

このように式(9)によるp(0)の値はuが0.3より小さくなると急速に大きくなり、1以上という確率の値としてはありえない値を示すようになります。これは明らかにおかしいです。ということは式(9)は近似式としてはふさわしくない、ということです。
どうしてこんなことが起きたのでしょうか? 前回の「昔の痛い思い出が教える・・・・(1)」において

式(2)と(5)から

  • p(0)=\frac{\Pi(M/M/s)}{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(7)

としたところに問題があります。式(7)自体は問題ないのですが、uの値が小さいとき\Pi(M/M/s)

  • \frac{(su)^s}{s!(1-u)}

も非常に小さい値になります。小さい値を小さい値で割るため、\Pi(M/M/s)に近似式

  • \Pi(M/M/s){\approx}u^{\sqrt{2(s+1)}-1}・・・・(6)

を使うとその誤差が増幅されてしまうのです。