ゴールドラット博士逝去

TOC(Theory of constraint:制約理論)や小説「ザ・ゴール」で有名な経営コンサルタントエリヤフ・ゴールドラット博士が6月11日に亡くなったという記事を日経ビジネス・オンラインの中に見つけた。それほど高齢ではなかったはず、と思いつつ記事を読むと64歳ということだった。もう、この人から新しい本が出版されないと思うと残念である。
初めて「ザ・ゴール」

を読んだ時の衝撃は忘れられない。これは(もともと物理学者だった)ゴールドラット博士が編み出した工場運営(工場のスケジューリング)の方法を小説じたてにしたものだが、小説としても面白く、500ページ以上あるが、2日で読み終えた覚えがある。そして、ここからいろいろなことを学んだ。私はいくつかの個所については反発し、自分なりに論拠を考えたりした(そのために「Factory Physics」を学んだ)が、それだって無駄ではなかったと思う。私はもっと数式による証明を欲していたのだが、今になってみると数式が出来ることは限られていると思う。数式を使わずとも論理的思考はもっと先まで進むことが出来る。ただ、私はその論理的思考が弱い。数式がないと不安になる。
「ザ・ゴール」はゴールドラット博士の最初の本であったが、彼の2番目の本「思考プロセス」(邦題は「ザ・ゴール」のヒットで二匹目のドジョウを狙って「ザ・ゴール2」だが)

は、自分の仕事に一番役立ったと感じている。ただ、私のやり方は自己流で、本当はもっとキチンと思考プロセスを身につけたほうがよいのだろう。
以来、

と本が出るたびに買っていた。2008年に「ザ・チョイス」を買って読んだ時にはあまり意味が分からないと感じた。その年の年末、Tさんとこの本について感想を言い合った際に私が「この本は遺言みたいだ」と言ったことを覚えている。実際には、この本のあとに

が出版され、これは「ザ・ゴール」を思わせる面白さだった。


今、ゴールドラット博士の死去の報を聞いて、私が彼の遺言と感じた「ザ・チョイス」をゆっくり読み直してみようと思っている。きっと、これが一番重要な本だ。


参考
ゴールドラット博士を悼んで親交の深かった二人の日本人からの追悼文――ダイヤモンド社 書籍オンライン
【追悼】『ザ・ゴール』のゴールドラット博士が逝去――日経ビジネス オンライン