GI/G/sの待ち確率Πを求めて(3)

GI/G/sの待ち確率Πを求めて(2)」の最後で私はD/D/1待ち行列の定常状態確率について

さらに「定常状態分布」の式(4)(5)

  • [tex:k
    • p(k)\approx\frac{(su)^k}{k!}p(0)・・・・(4)
  • k{\ge}sの場合
    • p(k){\approx}b^{k-s}(1-b)\frac{(su)^s}{s!(1-u)}p(0)・・・・(5)

も、D/D/1では

  • k=0の場合
    • p(0)\approx\frac{u^0}{1!}p(0)=1-u
  • k{\ge}1の場合
    • p(k){\approx}0^{k-1}(1-0)\frac{u^1}{1!(1-u)}(1-u)=0^{k-1}u

つまり

  • k=0の場合
    • p(0)\approx{1}-u・・・・(44)
  • k{\ge}1の場合
    • p(k){\approx}{0}^{k-1}u・・・・(45)

となり、さらに式(45)はk=1の場合とk>1の場合に分けて考えれば

  • k=0の場合
    • p(0)\approx{1}-u・・・・(44)
  • k=1の場合
    • p(1){\approx}u・・・・(46)
  • k>1の場合
    • p(k){\approx}{0}・・・・(47)

となり、これもまたD/D/1のp(k)の値として妥当な値を示しています。

と書いたのですが、改めて「定常状態分布」を見ると

  • b=\frac{(c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}{2-(2-c_a^2-c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}・・・・(7)

と書いておりました。D/D/1ですからc_a=0かつc_e=0です。これらを式(7)に代入すると、

  • b=0

になります。それでは、「GI/G/sの待ち確率Πを求めて(2)」での問い

・・・・間違っていたのはbを求める式(27)

  • b=\frac{(2c_a^2+[1-c_a^2]u)u}{2-(2-\{2c_a^2+[1-c_a^2]u\})u}・・・・(27)

である、とも考えることが出来そうだからです。


では式(27)の代わりにどのような式を構成すればよいのでしょうか? まだ私には分かりません。

については、式(27)の代わりに式(7)を用いればよいのでしょうか?



ところがこれはうまく行きません。たとえば、M/D/sの場合、式(7)は、c_a=1c_e=0なので

  • b=\frac{u}{2-u}・・・・(48)

となりますが、「GI/G/sの待ち確率Πを求めて」の式(26)

  • \Pi\approx\frac{b}{u}\cdot\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(26)

に式(48)を代入すると

  • \Pi\approx\frac{1}{2-u}\cdot\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(49)

となってしまいます。ところがM/D/sはM/G/sの特殊な場合ですから「ジョブ到着時に、全ての装置がふさがっている確率」の式(24)

  • \Pi{\approx}\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(24)

が成り立つはずです。よって式(49)は正しくありません。ということはbに式(7)を用いることは、少なくとも式(26)に用いることは間違っていることになります。


では、この問題はどのように解決したらよいでしょうか? 私が考えたのは、

  • \Pi\approx\frac{b}{u}\cdot\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(26)

で出てくるbの代わりに\betaと置き、\betabとは別のものと考えることです。

  • \Pi\approx\frac{\beta}{u}\cdot\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(50)

そもそもbは「定常状態分布」のGI/G/sについてのp(k)の式

  • k{\ge}sの場合
    • p(k){\approx}b^{k-s}(1-b)\frac{(su)^s}{s!(1-u)}p(0)・・・・(5)

bを与えるものとして求められました。そこで、これと式(50)に出てくる\betaとは意味が違うものである、ただし処理時間分布が指数分布(M)の場合には両者が一致する、と考えることにしました。