GI/G/sの待ち確率Πを求めて(6)

GI/G/sの待ち確率Πを求めて(5)」の続きです。処理終了時に、終了直前の状態がk+1、ただしk+1{\ge}s、であるような処理終了の回数を単位時間あたりで計った値の平均値である式(63)

  • A=\alpha\frac{s}{t_e}p(k+1)・・・・(63)

k{\rightar}k+1の変化が単位時間あたり起こる回数の平均値

  • \frac{su}{t_e}\pi(k)・・・・(58)

は定常状態では等しいはずなので

  • \frac{su}{t_e}\pi(k)=\alpha\frac{s}{t_e}p(k+1)

よって

  • \pi(k)=\frac{\alpha}{u}p(k+1)・・・・(64)
  • ただしk+1{\ge}s

ここから

  • k{\ge}sの場合
    • \pi(k)=\frac{\alpha}{u}p(k+1)・・・・(65)

を言うことが出来ます(k+1{\ge}sならばk{\ge}sなので)。「GI/G/sの待ち確率Πを求めて(5)」の式(56)

  • k{\ge}sの場合
    • p(k+1){\approx}bp(k)・・・・(56)

を式(65)に代入して

  • k{\ge}sの場合
    • \pi(k){\approx}\frac{\alpha{b}}{u}p(k)・・・・(66)

よって

  • \Bigsum_{k=s}^{\infty}\pi(k){\approx}\frac{\alpha{b}}{u}\Bigsum_{k=s}^{\infty}p(k)

よって

  • \Pi\approx\frac{\alpha{b}}{u}\Omega
  • \frac{\alpha{b}}{u}\approx\frac{\Pi}{\Omega}・・・・(67)

これを「GI/G/sの待ち確率Πを求めて(4)」の式(52)

  • \frac{\beta}{u}=\frac{\Pi}{\Omega}・・・・(52)

と比べると

  • \beta{\approx}\alpha{b}・・・・(68)

であることが分かります。



ところで\alphaを定義したところでは到着分布には何も言っていませんでした。よって、\alphaは到着分布に依存しないと考えられます。そこでM/G/sの場合を考えて、その時の\alphaを求めれば、それがGI/G/sの場合の\alphaになるはずです。M/G/sの場合はPASTAが使えて

  • \Omega=\Pi・・・・(69)

でした。よって式(52)から

  • \beta=u・・・・(70)

です。よって式(68)から

  • \alpha{\approx}\frac{u}{b}・・・・(71)

になります。M/G/sの時のbの値は「定常状態分布」の式(7)

  • b=\frac{(c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}{2-(2-c_a^2-c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}・・・・(7)

c_a=1を代入したものになりますので

  • b=\frac{(1+c_e^2)u}{2-(1-c_e^2)u}・・・・(72)

よって式(71)から

  • \alpha\approx\frac{2-(1-c_e^2)u}{1+c_e^2}・・・・(73)

これと式(68)から

  • \beta\approx\frac{2-(1-c_e^2)u}{1+c_e^2}b・・・・(74)

ここでのbは式(7)で求めたものです。さらに式(52)に式(74)を代入すれば

  • \frac{2-(1-c_e^2)u}{(1+c_e^2)u}b\approx\frac{\Pi}{\Omega}

よって

  • \Pi{\approx}\frac{2-(1-c_e^2)u}{(1+c_e^2)u}b\Omega・・・・(75)

これで「ジョブ到着時に、全ての装置がふさがっている確率」では求めることの出来なかった\Piの近似値をGI/G/sについて求めることが出来ました。なお、\Omegaは「時間平均で装置が全てふさがっている確率」の式(21)

  • \Omega{\approx}\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(21)

を用いて近似的に求めることが出来ます。