ぼやき

待ち行列理論って役に立つのかなあ」
私が待ち行列理論を独学し出してもう4年になりますが、この問いは何度も私の頭に去来します。私が既存の待ち行列の本(教科書)に不満なのは、実務に応用しようとするとすぐに障害が出ることです。待ち行列理論でもっとも詳細に答が求まるのは、到着過程がポアソン過程、処理時間が指数分布、つまりM/M/の時です。その場合でさえ、装置台数が2台以上になるととたんに計算が複雑になってきます。
ところが、現実に出会う待ち行列は(工場の内部に限らず)到着過程がポアソン過程になるという保証はなく、処理時間はまずもって指数分布からかけ離れた分布になっています。そういう時に近似的にでもいいから答を知りたいと思っても、たいていの待ち行列の本にはそれに関する記述がありません。そこが不満なのですが、自分でやってみると、これが難しいことがよく分かります。だから、普通の本には載っていないんだ、と、少し納得はするものの、やはり、もう少し何とかならないものか、と思ってやってきました。でも、結果はあまり進んでいません。


現実には、工場で問題になる事象はもっと複雑で、例えば、待ち行列長に上限がある(半製品を置く場所には限りがある)。ロットに優先度がある。その優先度もダイナミックに変わる。装置群内の装置は必ずしも同等ではない。待ち時間の上限がある場合がある。そのような場合に数式で、いろいろな量(WIPやスループット、など)の間の関係を数式で表そうとしても到底無理です。
結局のところシミュレーションしてみるしかないのか。と、半ばあきらめ気味になってきます。


しかし、私はシミュレーションの結果にはかなりの注意が必要だと思っています。1回のシミュレーションで得られる結果はグラフ上の1点に過ぎません。いろいろな入力パラメータの間の関係を知ろうと思ったら、それらのパラメータを全て変化させてシミュレーションを繰り返さなければなりません。その組合せは掛け算で効いてきますので、パラメータの量が多くなるにつれて急速にシミュレーションの回数が増加します。
その上、このシミュレーションは確率的に動作するものですから、精度を上げるためには同一条件でのシミュレーション時間を充分に長くするか、あるいは乱数を変えてシミュレーションを繰り返すかしなければなりません。この時間の長さ、あるいは回数は精度を上げようとすればするほど急速に大きくなります。そんな訳で、シミュレーションから有用な情報を得ようとすると莫大な時間と労力が必要になります。往々にしてそれだけの時間と労力を費やすことが出来ないので、出てくる結果について、全面的に信じることは危険だと、私は思っております。


そうすると、この分野で有用な結果をさらに獲得するにはどのような方法論を用いればよいのでしょう? なかなか悩ましいです。