ぼやきのつづき

ぼやき」の続きです。
例えば先日「ISSM2011」で紹介した私が興味を引いた論文のことを、待ち行列理論の観点から考えてみました。


Analysis of Demand Patterns on Demand-Pull replenishment Application(需要プル補充適用における需要パターンの解析)は、工場で完成した製品を保管する製品在庫の管理方法を論じた論文です。製品在庫はあまり多く持つと管理費と売れなかった時に廃棄する(あるいは安売りを強いられる)在庫量が増大することの2つのリスクが発生します。かといって在庫をあまり少なくすると、急に需要が集中したときに売り切れになり、せっかくの販売のチャンスを逃すリスクが発生します。そこで適正な在庫量上限(それより在庫が少なくなった時に工場に対して製造を要求する基準値)はいくつか、という課題が浮かび上がります。これは一見、製品在庫が待ち行列モデルにおける待ち行列に見えますが、製品の種類が多数あることに注意しなければなりません。ここの製品についてなるべく売り切れを引き起こさない最小の在庫量上限を見つけることが課題なのです。ところが通常扱う待ち行列モデルは1種類のジョブしか扱いません。複数種類のジョブを扱う待ち行列モデルもありますが、その場合、装置はどの種類のジョブをも処理します。特定の種類の製品がある時に集中して需要を持つようなモデルには不向きのような気がします。

  • とは言え、この点、もう少し考えて見る必要があります。


Quantify Equipment Capacity Impacts induced by Maximum Waiting Time Constraint through Simulation(最大待ち時間制約がもたらす装置キャパシティへの影響のシミュレーションによる定量化)
これは、待ち時間制約を待ち行列長制約と読み替えれば、待ち行列長が有限な待ち行列モデルになります。これについてはM/M/の場合しか、私は解析方法を知りません。ですから一般の工場での結果を予測することは出来ません。この論文でもシミュレーションを用いていました。とはいえ、M/M/のモデルを使って定性的に現象を論じることが出来るかもしれません。


Dual Type Scheduling - Apply Multi-direction Neighborhood Search Algorithm(デュアルタイプ・スケジューリング 多方向近傍サーチアルゴリズムの適用)は最適化の問題であり、スケジューリングの問題です。あるスケジューリング規則を施した時にサイクルタイムがどれほどよくなるか、あるいはスループットがどれだけ向上するか、ありは納期遵守率がどの程度向上するか・・・・。こういった問題を扱いたいと思いますが、通常、待ち行列理論はFIFO(First In, First Out:先入れ先出し)のジョブ選択ルールを用いており、このような問題に対しては非力です。ここは、シミュレーションと現場での観測に頼るしかありません。


最後のMethod to achieve demand target in a complicated product mix manufacturing(複雑な製品ミックス生産において需要目標を達成するための方法)については、これもまたFIFOではないジョブ選択ルールを用いているので、待ち行列理論は非力です。

  • ただ私は、FIFOの場合、サイクルタイムがどの程度ばらつくのか調べてみたい気になりました。それを用いて、ばらつきを押さえる影響を何らかの方法で表すことが出来ないか、と想像します。

こうやって書いてみると、待ち行列理論を使ってやれそうなことが、まだ少しはあるみたいです。ぼやくのは早いのかもしれません。