ヘルメス文書
- 作者: 荒井献,柴田有
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 1980/10
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この本を買ったのは、どうやら1980年らしい。まだ、学生の頃だ。ユングにはまっていたので、その関連で買ったのだと思う。昔、「エピステーメー」という難解な雑誌があって、その中で、のちにこの本になる連載があったことを思い出す。確かに、それを読んで(いや、眺めて)いたのは学生の頃だ。
この本は、ヨーロッパのオカルト思想の源泉のひとつである「ヘルメス選集(Corpus Hermeticum)」を日本語に訳したものである。元の言語はギリシア語で、紀元1世紀から3世紀にかけて作られた特殊な宗教的哲学的文書である。その文章からはエジプトへの誇りの感情が時折見られるが、思想的にはプラトン哲学とユダヤ教神学の両方からの影響を受けているように見える。古代エジプトの宗教思想からの影響はほとんど感じられない。「ヘルメス選集」に収められている一部の文書はグノーシス的とも呼ばれている。
私にとって、これは自分のオカルトへの興味を満たすための本であるが、それほど中身を読んでいるわけではない(難解な内容である)。それなのに、最近急に、これを読まなければならない、という内的な圧力を感じ始めた。そんなことしたら「工場統計力学」はしばらくお休みになるのだが・・・。
さて、ここに収められている文書は18文書。それぞれのタイトルを以下に示す。
- 1.ヘルメース・トリスメギストスなるポイマンドレース
- 2.(タイトル欠)
- 3.ヘルメースの聖なる教え
- 4.ヘルメースからタトへ。クラテールあるいは一なる者
- 5.ヘルメースから子タトへ。不明なる神が最も鮮明なること
- 6.善は神のうちにのみあり、ほかにはどこにもないこと
- 7.神に対する無知が人間における最大の悪であること
- 8.存在するものは何一つ消滅しないのに、迷妄の輩は変化を消滅とか死とか呼んでいること
- 9.知性と感性について
- 10.ヘルメース・トリスメギストスの「鍵」
- 11.ヌースからヘルメースへ
- 12.ヘルメース・トリスメギストスからタトへ。普遍的叡智(ヌース)について
- 13.ヘルメース・トリスメギストスが山上で子タトに語った秘められた教え。再生と沈黙の誓いについて
- 14.ヘルメース・トリスメギストスからアスクレーピオスへ。ご機嫌よう
- 15.(タイトル欠)
- 16.アンモーン王に宛てたアスクレーピオスの解義
- 17.(タイトル欠)
- 18.身体の受動の下に阻害されている魂について
では「ヘルメース・トリスメギストス」とは何者か? これはギリシア語で「3倍偉大なヘルメース」という意味であるが「ヘルメース」はギリシア神話に登場する神である。役どころは神々の伝令、商売の神、泥棒たちの神、死者の魂を冥界に導く道案内、といったところで、どことなくトリックスター的なところがある。では「ヘルメース・トリスメギストス」がそのヘルメース神か、と言えば、読んだ印象ではどうもそうではないらしい。もっと落ち着いた権威者を感じさせる。神ではなくて人であり、古代の賢者、といった感じである。主にそのヘルメース・トリスメギストスが神秘的な智慧について語るのがこれらの文書である。