「バッファ・マネジメントについて(9)」の続きです。
最後に、工場サイクルタイムが変動する場合について考察します。今までは工場サイクルタイムは一定であると仮定してきました。この仮定は多くの場合、現実からかけ離れています。では、工場サイクルタイムが変動するとどのような影響があるでしょうか?
まず、需要が一定間隔の場合を考えてみます。例として今までと同じように0.5回/日であるとします。そして平均工場サイクルタイムが3日であったとします。もし、工場サイクルタイムに変動がないならば、3日分の総在庫数(つまり、0.5×3=1.5個の製品。しかし総在庫数は自然数なので2個の製品)を持っておれば充分なのですが、ある時に工場サイクルタイムが変動して5日になるならば、この総在庫数では足りなくなります。もちろん変動は、平均より長くなる場合だけでなく平均より短くなる場合もあり得ます。工場サイクルタイムが平均3日のところ、ある時は1日になって、手持ち在庫が増える場合もあるかもしれません、そういう状態の時に向上サイクルタイムが今度は平均より長くなって製品在庫への製品の到着がしばらく途絶えるのであるならば、何とか品切れを起こさずにすむかもしれません。しかし、変動というものは通常、確率的に起こるものです。そう都合よく、工場サイクルタイムが短い場合と長い場合は繰り返し同じ回数で起きるとは限りません。ある時には、工場サイクルタイムが短い場合は少ししかなくて、その後、工場サイクルタイムが長い場合が何個か続くかもしれません。そのようなことを考えると、品切れを起こさないようにするには、やはり手持ち在庫をもう少し増やしたほうがよさそうです。と、いうことで、需要が一定間隔の場合には、工場サイクルタイムが変動すると必要総在庫数が増加する、変動が大きくなるほど必要総在庫数がより増加する、ということになります。
では、需要が変動する場合はどうでしょうか? この場合も工場サイクルタイムが変動すると必要総在庫数が増加する、と私は直感的に思っています。思っていますが、そうでない可能性もあります。というのは変動した需要に対してさらに変動を加えた場合、本来集中していた変動が、製品在庫に到着する時にはバラけていたり、逆にバラけていた変動が製品在庫に到着する時には集中したりして、結局、製品在庫に到着する時の到着間隔の変動は、需要の変動と変わらないのではないか、という気もするからです。これは今後の宿題です。