バッファ・マネジメントについて(まとめ)
では、今までに分かったことをまとめてみます。
その前に、説明を簡便にするために用語を一つ定義しておきます。すなわち、必要総在庫数から工場内の製品数の「平均」を引いたもの、すなわち需要変動に対応して品切れを起こさないようにした最小の平均手持ち在庫数を必要平均手持ち在庫数と呼ぶことにします。必要総在庫数がバッファ・マネジメントのために設定する値であるのに対し、必要平均手持ち在庫数はバッファ・マネジメントの結果、観測される値であることに注意して下さい。
以下、まとめを示します。
- 必要総在庫数は、需要変動に対応するために必要な最小の総在庫数のことである。この必要総在庫数を満たすように工場への生産指示を行うことにより、品切れを起こさず、かつ、在庫を最小にすることが出来る。
- 必要総在庫数は工場内の平均製品数+必要平均手持ち在庫数と考えることが出来る。
- 需要が一定間隔で規則的に発生し、かつ、工場の生産サイクルタイムが一定の場合は必要平均手持ち在庫数はほとんどゼロである。需要の変動が大きくなるにつれて必要平均手持ち在庫数は増加する。
- 工場の生産サイクルタイムが増加するとリトルの法則により工場内の平均製品数が比例して増加する。それだけでなく、必要手持ち在庫数もまた増加する。これは工場のサイクルタイムが増加したために、需要変動への対応が遅れるためである。よって、変動の激しい需要に対応するためには工場での生産サイクルタイムが短いほうが望ましい。
- 工場の生産サイクルタイムの変動が必要手持ち在庫数に与える影響は
- 需要がほぼ一定間隔の場合には、悪影響をおよぼす。すなわち必要手持ち在庫数は増加する。
- 需要が変動する場合については、悪影響をおよぼすかどうかは今のところ明らかでない。
最後の文章が示すように、バッファ・マネジメントを適用した生産ラインの挙動についての私の研究はまだ不完全です。しかし、これより先に進むにはいろいろなことをクリアしていかなければならないようなので、一旦、ここでバッファ・マネジメントの話題は終了にしたいと思います。そして、最後の最後に今後の課題を洗い出しておきます。