DBR(ドラム・バッファ・ロープ)で設定するWIPについて

昨日「バッファ・マネジメントについて(まとめ)」をアップしたあとに、昨日書いた内容は、DBR(ドラム・バッファ・ロープ)で、工場の先頭工程からボトルネック工程までにどれだけWIPを貯めておくのが適当か、という問題にもある程度の知見を与えるものではないか、と思い当たりました。つまり、以下ののように言えるのではないか、ということです。

  1. 最初の工程からボトルネック工程前までの必要WIPは、ボトルネック装置の稼働の変動に対応するために必要な最小の最初の工程からボトルネック工程前までの必要WIP数のことである。この最初の工程からボトルネック工程前までの必要WIP数を満たすように工場への生産指示を行うことにより、ボトルネック装置を遊ばせることなく、かつ、WIPを最小にすることが出来る。(リトルの法則によって、サイクルタイムを最小にすることが出来る、とも言うことが出来る。)
  2. 最初の工程からボトルネック工程前までの必要WIP最初の工程からボトルネック工程の前工程までの平均WIPボトルネック工程での必要平均WIPと考えることが出来る。
  3. ボトルネック装置がダウンすることなく、かつ、処理時間が一定で、かつ、最初の工程からボトルネック工程の前工程までのサイクルタイムが一定、の場合はボトルネック工程での必要平均WIPはほとんどゼロである。ボトルネック装置の生産能力の変動が大きくなるにつれて(つまり、装置ダウンがあったり、処理時間にバラつきが大きくなるにつれて)ボトルネック工程での必要平均WIPは増加する。
  4. 最初の工程からボトルネック工程の前工程までのサイクルタイムが増加するとリトルの法則により最初の工程からボトルネック工程の前工程までの平均WIPが比例して増加する。それだけでなく、ボトルネック工程での必要平均WIPもまた増加する。これは最初の工程からボトルネック工程の前工程までのサイクルタイムが増加したために、ボトルネック装置の生産能力の変動への対応が遅れるためである。よって、生産能力の変動の激しいボトルネック装置に対応するためには最初の工程からボトルネック工程の前工程までのサイクルタイムが短いほうが望ましい。
  5. 最初の工程からボトルネック工程の前工程までのサイクルタイムの変動がボトルネック工程での必要平均WIPに与える影響は
    • ボトルネック装置の生産能力がほぼ一定の場合には、悪影響をおよぼす。すなわちボトルネック工程での必要平均WIPは増加する。
    • ボトルネック装置の生産能力が変動する場合については、悪影響をおよぼすかどうかは今のところ明らかでない。

こうやって置き換えてみると、いろいろ突っ込みどころはあり、さらに検討しなければならない課題も暗示してくれます。今、特に気になるのは最後の文章です。「ボトルネック装置の生産能力が変動する場合、最初の工程からボトルネック工程の前工程までのサイクルタイムの変動はボトルネック工程での必要平均WIPに悪影響をおよぼすかどうかは今のところ明らかでない。」ではなく、私は直感的に「悪影響をおよぼす。すなわちボトルネック工程での必要平均WIPは増加する」と感じます。最初の工程からボトルネック工程に到る一連の工程のどこかで装置が1台しかなく、しかもその装置がよく故障するような場合は、ボトルネック工程に貯めておかなければならないWIPは明らかに増えると思うのです。


そして、考えていくうちに、問題にすべきはサイクルタイムではなく、到着間隔の変動ではないか、と思えてきました。このあたり、落ち着いて考える必要があります。まだ、私の考えは熟していません。