GI/G/s待ち行列の待ち時間分布を求めて(3)

GI/G/s待ち行列の待ち時間分布を求めて(2)」の続きです。
では、いろいろなuc_a^2c_e^2の値について式(8)

  • b=\frac{(c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}{(1+c_e^2)-(1-c_a^2-c_e^2[c_a^2(1-u)+u-1])u}・・・・(8)

で求めたbの値と式(11)(12)

  • b=u+(c_a^2-1)u(1-u)h(u,c_a^2,c_e^2)・・・・(11)
  • h(u,c_a^2,c_e^2)=\left\{{\frac{1+c_a^2+u{c_e^2}}{1+u(c_e^2-1)+u^2(4c_a^2+c_e^2)}\text{    c_a^2<1}\atop{\frac{4u}{c_a^2+u^2(4c_a^2+c_e^2)}}\text{              c_a^2{\ge}1}}・・・・(12)

で求めたbの値を比べてみます。


uの値として0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 1.0を
c_a^2の値として0, 0.5, 1, 1.5, 2を
c_e^2の値として0, 0.5, 1, 1.5, 2を
考えてみます。


まず、明らかなのはどちらの方式でbを求めてもc_a^2=1の時はb=uとなることです。また、c_a^2=0かつc_e^2=0の場合はu=1の場合を除いて、どちらの方式でもb=0になり一致します。
u=1の場合はどちらの方式でも分母がゼロになり、計算が出来ません。c_a^2=0の時は、c_e^>0であっても両者の値は比較的一致しています。以下はc_a^2=0c_e^2=1、つまりD/M/1の場合です。


以下はc_a^2=0c_e^2=2の場合です。


c_a^2=1の時には、両者の値が厳密に一致することはすでに述べました。
以下はc_a^2=1c_e^2=2の場合です。

問題になるのはc_a^2>1の場合です。この場合、両者の値の差が若干大きくなります。
以下はc_a^2=2c_e^2=0の場合です。


以下はc_a^2=2c_e^2=1の場合です。


以下はc_a^2=2c_e^2=2の場合です。

このように両者の値は一致しない場合もあるので、どちらがよりよい近似なのか調査しなければなりません。ところでこの式(11)(12)を私はWhitt教授の「Queueing Network Analyzer」(「Word Whitt: The Queueing Network Analyzer(13)」参照)を読んで知ったのですが、「Queueing Network Analyzer」ではこれは、W. Kraemer and M. Langenbach-Belz,「Approximate Formulae for the Delay in the Queueing System GI/G/1(待ち行列システムGI/G/1における遅延についての近似公式)」Congressbook, Enghth Int. Teletraffic Cong., Melbourne, 1976, pp. 235-1/8.からの引用、と書いています。この論文が無料でダウンロード可能なことを最近発見しました。

この近似式の根拠を理解するために、この論文を読むことにします。