待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式(3)

待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式(2)」の続きです。

3 単一到着のシステム
この章内では単一到着の制限とは、到着間隔T_A=0は許されない、ということである。つまり、F_A(0)=0

3.1 平均待ち時間の近似
3.1.1 解法の基礎
予備調査によって、平均待ち時間のヒューリスティックな近似のためのよい出発点は、調整関数g(\cdot)を含む公式

  • E(T_W)=\frac{A\cdot{h}}{2(1-A)}\cdot(c_A^2+c_H^2)\cdot{g}(A,c_A^2.c_H^2)・・・・(3.1)

であることが分かった。g(\cdot)は以下のように導出される。
 関数g(\cdot)は今、いくつかの境界条件によって制約されている。

  • a) c_A^2=1の場合、ポラツェク=ヒンチンの公式が成り立つので、
    • g(A,1,c_H^2)=1・・・・(3.2)
  • b) A\rightar{1}の時、重負荷公式(2.3)によって
    • g(1,c_A^2,c_H^2)=1・・・・(3.3)
  • c) D/D/1システムでは待ちがまったくないので
    • g(A,0,0)<\infty・・・・(3.4)


3.1.2 公式の開発
公式の開発の間に、調整関数g(\cdot)について2つの異なる範囲、c_A^2{\le}1c_A^2{\ge}1をそれぞれ区別することが有用であることが分かった。


3.1.2.1 劣指数到着間隔分布関数
D/M/1システムの別の事前調査から、有用な明快な近似が

  • E(T_W)_{D/M/1}=\frac{A\cdot{h}}{2(1-A)}\cdot\exp\left(\frac{-2(1-A)}{3A}\right)・・・・(3.5)

であることが判明した。これら全ての境界条件(3.2)〜(3.5)の組合せによって式

  • g(A,c_A^2,c_H^2)=\exp\left(-\frac{2(1-A)}{3A}\cdot\frac{(1-c_A^2)^b}{a\cdot{c}_A^2+c_H^2}\right)  (c_A^2{\le}1)・・・・(3.6)

が導かれる。ただし、abは自由パラメータである。
[tex:03.1.2.2 超指数到着間隔分布関数
c_A^2{\ge}1について(3.2)と(3.3)を満たすためには、式

  • g(A,c_A^2,c_H^2)=\exp\left(-(1-A)\frac{(c_A^2-1)^c}{a\cdot{c}_A^2+b\cdot{c}_H^2}\right)  (c_A^2{\ge}1)・・・・(3.7)

が選ばれた。やはりa,b,cは自由パラメータである。
c_A^2であるH2/D/1システムの場合、この式でaだけが関係する。シミュレーション結果との比較によってa=1が導かれた。この結果を用い、さらにc_A^2=4であるH2/D/1システムを考慮すると、c=1が妥当な選択であることが判明した。
最後に、H2/M/1システムとの比較がb=4を導くので、c_A^2{\ge}1についての最終結果が導かれる。
(この論文中では、H2は2つの選択肢が等しく使用される超指数分布関数である。)
もちろん、このヒューリスティックな手続きは単純ではなく、以前のパラメータの選択の見直しを必要とした。さらに、当てはめの式の体系的な検索が、境界条件を定義しそれらの中の自由度を利用することによって促進された。


3.1.3 数値結果との比較
図3.1と3.2は式(1.3)による近似結果とシミュレーション・ランの結果の間の比較の若干の例である。
見て分かるように、近似とシミュレーション結果の間の一致度はかなりよい。一般的な誤差の考察は、他の分布関数と一緒に、3.3で行われる。

    • 図3.1 D/G/1システムの平均待ち時間。
      • シミュレーション結果の信頼区間は95%
    • 図3.2 H2/G/1システムの平均待ち時間


W. Kraemer and M. Langenbach-Belz,「Approximate Formulae for the Delay in the Queueing System GI/G/1」より