待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式(8)

待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式(7)」の続きです。

5 他のトラフィックの数値の決定
この証までは、単一到着システムとバッチ到着システムの両方について、平均待ち時間E(T_W)と待ちの確率Wのみを考察してきた。定常単一サーバシステムの広範なクラスにおける関係(MARSHALL*1、RICE*2 )に基づいて、近似公式(1.3)と(1.4)は他のシステム特性値を近似的に計算するのにも用いることが出来る。


5.1 出発の変動
出発過程の変動と平均待ち時間の間の以下の関係が*3の中で見つけられている。

  • Var(T_D)=Var(T_A)+2Var(T_H)-\frac{2}{\lambda}(1-A)\cdot{E}(T_W)・・・・(5.1)

変動係数とE(T_D)=E(T_A)を用いて

  • c_D^2=c_A^2+2A^2\cdot{c_H^2}-2A(1-A)\frac{E(T_W)}{h}・・・・(5.2)

(1.3)によるE(T_W)を用いれば、これは出発過程の変動係数c_Dについての単純で明快な近似である。
この公式はポアソン到着についてはよく知られた形に特殊化される*4

  • c_D^2=1-A^2\cdot(1-c_H^2)・・・・(5.3)

KUIHN*5は一般の待ち行列ネットワークの出発過程について(5.2)を用い、(1.3)を引き継いだ( *6の出力図もまた参照せよ)。


5.2 空きと稼働の期間
*7からの正確な公式

  • (1-W)\cdot{E}(T_{IP})=\frac{1}{\lambda}-h・・・・(5.4)

により、空きの期間の平均時間E(T_{IP})もまた(1.4)を用いて

  • E(T_{IP})=\frac{1-A}{A(1-W)}\cdot{h}・・・・(5.5)

と近似出来る。( *8からの)次の関係は空き期間の2次モーメントE(T_{IP}^2)を含み、よってこれもまた導出した近似を用いて計算出来る。

  • E(T_W)=\frac{c_A^2+A^2\cdot{c}_H^2+(1-A)^2}{2A(1-A)}\cdot{h}-\frac{E(T_{IP}^2)}{2E(T_{IP})}・・・・(5.6)

関係*9によって稼働期間T_{BP}の平均長さを近似することも可能である。

  • E(T_{BP})=\frac{1-P_0}{P_0}\cdot{E}(T_{IP})・・・・(5.7)

ただしP_0は空システムの絶対確率である(また有限の待ち合い場所を許容する)。純粋待ちシステムについては、ここで考察したようにP_0=1-Aで、よって(5.5)を考慮して

  • E(T_{BP})=\frac{1}{1-W}\cdot{h}・・・・(5.8)

RIORDAN*10では式(5.4)と(5.7)は到着過程に関する特別な仮定なしで導かれている。よって平均空き期間の式(5.5)と平均稼働時間の式(5.8)はバッチ到着システムにも(4.4)によるWを用いれば適用可能である。



6 まとめと結論
一般の単一サーバシステムGI/G/1について単純な2モーメント近似が平均待ち時間と待ちの確率について導出された。その動機は多くの複雑で正確な結果と工学のための迅速な数値計算の間のギャップであった。
2モーメントに制限することにより、公式と適用は迅速で単純になり、もちろんよって若干の誤差を含むようになる。明白な正確な公式を枠組みとして用いそれら内部の自由度を体系的に利用することにより、ヒューリスティックな公式の開発は多かれ少なかれ体系的に実行出来た。


これらの公式の精度は調査され広範囲の応用やトラフィックの仮定の範囲で非常に有用であることが証明され、バッチ到着のシステムをも容易に含むことが出来る。


さらに、確率的なフィードバックを持つGI/G/1システムやバッチサービスシステムをも含む単純な可能性が存在することも留意すべきかもしれないが、ここでは考察しなかった。
さらに、出発過程の変動や空きと稼働の期間の平均値についての単純な公式も利用可能である。
平均待ち時間と出発変動の近似の有用性については、待ち行列ネットワークの文脈でKUIHN*11による姉妹論文ですでに示されている。これらの近似を含む表も提供されている*12


これらのヒューリスティックな近似が、それらはGI/G/1の到着間隔とサービス時間の分布関数を詳細に反映する研究に置き換わることは出来ないし、するつもりもないが、トラフィック技術者が自分の特別な単一サーバモデルでの待ちについての非常に迅速にかつ単純に有用な見積もりを得るのに役立つことが期待される。




W. Kraemer and M. Langenbach-Belz,「Approximate Formulae for the Delay in the Queueing System GI/G/1」より

*1:MARSHALL, K.T. Some Inequalities in Queueing J. Op. Res. 16(1968),651-668

*2:RICE, S.O. Single Server Systems-I. Relations between some Averages. BSTJ 41(1962), 269-278

*3:MARSHALL, K.T. Some Inequalities in Queueing J. Op. Res. 16(1968),651-668

*4:MAKINO, T. On a Study of Output Distribution J.Op.Res.

*5:KUIHN, P. Analysis of Complex Queueing Networks by Decomposition. 8th ITC, Melbourne, 1976 (this volume)

*6:KUIHN, P. Analysis of Complex Queueing Networks by Decomposition. 8th ITC, Melbourne, 1976 (this volume)

*7:RICE, S.O. Single Server Systems-I. Relations between some Averages. BSTJ 41(1962), 269-278

*8:MARSHALL, K.T. Some Inequalities in Queueing J. Op. Res. 16(1968),651-668

*9:RICE, S.O. Single Server Systems-I. Relations between some Averages. BSTJ 41(1962), 269-278

*10:RIORDAN, J. Stochastic Service Systems JWS, NY, London, 1962

*11:KUIHN, P. Analysis of Complex Queueing Networks by Decomposition. 8th ITC, Melbourne, 1976 (this volume)

*12:KUIHN, P. Tables of Delay Systems. Institute of Switching and Data Technics, University of Stuttgart, 1976.