『「待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式」の内容検討(1)』ではGI/G/1待ち行列における、待ち確率、つまり、ジョブが到着した際に装置がふさがっているのを見る確率、の近似式の形として
- ・・・・(13)
- ただし、は調整関数で以下の形式を持つ
- ()・・・・(16)
を採用するところまでみました。ところで前記論文では、調整関数の形はの場合との場合で分けて考えるのがよいとしています。そして式(16)はの場合の式の形としています。私には式(16)の形がの場合には用いられない理由が分かりません。前記論文では
3.2.2 公式の開発
先ほどと同じように、指数以下と超指数の到着間隔の分布関数を別々に扱った。
とあり、ここでいう「先ほど」というのは、平均待ち時間の近似式を導くところでの
3.1.2 公式の開発
公式の開発の間に、調整関数について2つの異なる範囲、とをそれぞれ区別することが有用であることが分かった。
の箇所を指しているのですが、この箇所を見てもなぜ調整関数の形はの場合との場合で分けて考えるべきであるのか分かりません。おそらくはの場合に求めた式がの場合にはシミュレーション結果と合わないからなのでしょう。しかしその詳細はこの論文には書かれていません。
さて、式(16)で変数を求めるために論文ではD/M/1の場合を式(13)(16)に当てはめています。まず、D/M/1では
- ・・・・(17)
が成り立つとしています。これは「D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(2)」で導いた式(16)があり(ここでは番号を振り替えて式(18)とします)
- ・・・・(18)
を変形することで導くことが出来ます。つまり
となって、式(17)を導くことが出来ます。この式を解析的に解くことは出来ないのですが、前記論文では近似的に
- ・・・・(19)
となると言っています。私は「D/M/1待ち行列におけるbの近似式」で述べたように
- ・・・・(20)
という近似式を得ていました。式(19)と式(20)のどちらがより真のに近い近似式でしょうか? どちらが精度が高い近似式であるかはまず脇に置いておいて式(19)と(20)をグラフに描いて比較してみると、この2つの式の値がかなり一致することが分かります。
そこで私としても式(19)を認めることにします。さて、D/M/1では、なので式(13)は
- ・・・・(21)
となり、式(16)は
- ・・・・(22)
となります。式(21)と(22)から
- ・・・・(23)
式(23)と式(19)から
よって
- ・・・・(24)
ここから、と求めることが出来ます。これらを式(16)に代入すると
- ()・・・・(25)
となります。上記論文では続けて
幸いなことに、とのこの選択は他のD/G/1システムについても有用であることが証明された。
とありますが、D/G/1ならばなので式(25)は
- ・・・・(26)
となりとに依存しなくなるのでが近似的に計算出来ます。上の引用で「有用であることが証明された」と言っているのはおそらくシミュレーション結果と比較してよい一致を示したのを確認したということでしょう。次に
さらにE2とE4の到着過程を考察すると同様に、とを導き、これらはについての最終結果(12)を導いた。
とあります。曖昧な書き方ですが、おそらくE2/M/1やE4/M/1についてシミュレーションか何かの方法で求めたの値と比較して求めたのでしょう。このあたりの過程をもう少し詳しく書いてもらえたらよく理解出来たのに、と思います。