Pageの近似式の再検討(2)

Pageの近似式の再検討(1)」のつづきです。
ところで私はGI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式を導出する際に、Pageの近似式

  • CT_q(GI/G/s){\approx}c_a^2c_e^2CT_q(M/M/s)+c_a^2(1-c_e^2)CT_q(M/D/s)+(1-c_a^2)c_e^2CT_q(D/M/s)・・・・(7)

から出発しています。(「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(1)」参照) 私が開発したbの近似式

  • b=\frac{(c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}{(1+c_e^2)-(1-c_a^2-c_e^2[c_a^2(1-u)+u-1])u}・・・・(1)

の精度が、c_a>1の場合によくない、ということは実はこのPageの近似式の見直しにまで発展します。それはなぜか、ということをこれから述べていきます。


Pageの近似式をGI/M/1待ち行列に適用すると

  • CT_q(GI/M/1){\approx}c_a^2CT_q(M/M/1)+(1-c_a^2)CT_q(D/M/1)・・・・(8)

ここで、もちろん

  • CT_q(M/M/1)=\frac{u}{1-u}t_e・・・・(9)

です。またCT_q(D/M/1)については私は「D/M/1における待ち時間の近似式」の式(6)(ここでは番号を振り直して式(9)とします)

  • CT_q(D/M/1){\approx}\frac{u^2}{2(1-u)}t_e・・・・(10)

を提案しました。式(9)(10)を式(8)に代入すると

  • CT_q(GI/M/1){\approx}c_a^2\frac{u}{1-u}t_e+(1-c_a^2)\frac{u^2}{2(1-u)}t_e
    • =\frac{2c_a^2+(1-c_a^2)u}{2}\frac{u}{1-u}t_e
    • =\frac{c_a^2(2-u)+u}{2}\frac{u}{1-u}t_e

よって

  • CT_q(GI/M/1){\approx}\frac{c_a^2(2-u)+u}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(11)

となります。これは「Pageの近似式の再検討(1)」の式(6)

  • CT_q=\frac{c_a^2(2-u)+u}{2}\cdot\frac{u}{1-u}t_e・・・・(6)

にほかなりません。式(6)を導く際式(5)

  • b=\frac{(c_a^2(2-u)+u)u}{2-(2-c_a^2(2-u)-u)u}・・・・(5)

を用いました。式(5)はGI/M/1の場合の式(1)です。この式(5)がD/M/1やE2/M/1の時には(そしてもちろんM/M/1の時にも)精度がよいのに、c_a^2=2c_a^2=3のH2/M/1の場合には精度が悪いことを「「待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式」の内容検討(6)」「(7)」「(8)」で見てきました。このことは式(6)もまたD/M/1やE2/M/1の時には(そしてもちろんM/M/1の時にも)精度がよいのに、c_a^2=2c_a^2=3のH2/M/1の場合には精度が悪いことを意味します。ところが式(6)はPageの式を前提にして導かれるので、このことはPageの式自体がD/M/1やE2/M/1の時には(そしてもちろんM/M/1の時にも)精度がよいのに、c_a^2=2c_a^2=3のH2/M/1の場合には精度が悪いことを意味することになります。