同じ形の分布と倍率

ある分布の確率密度関数f_1(t)であるとします。もうひとつ別の分布があってその確率密度関数f_2(t)で表すことにします。この時

  • f_2(t)=\frac{1}{a}f_1\left(\frac{t}{a}\right)・・・・(1)

という関係があるならば、f_1(t)f_2(t)同じ形であると言うことにします。そしてa倍率と呼ぶことにします。
まず、f_1(t)が規格化されているならば、すなわち

  • \Bigint_0^{\infty}f_1(t)dt=1・・・・(2)

ならば、[tex;f_2(t)]も規格化されていることを示します。

  • \Bigint_0^{\infty}f_2(t)dt=\Bigint_0^{\infty}\frac{1}{a}f_1\left(\frac{t}{a}\right)dt・・・・(3)

ここで

  • \tau=\frac{t}{a}・・・・(4)

と置くと

  • \Bigint_0^{\infty}\frac{1}{a}f_1\left(\frac{t}{a}\right)dt=\Bigint_0^{\infty}f_1(\tau)d\tau=1

よって

  • \Bigint_0^{\infty}f_2(t)dt=1・・・・(5)

となって、f_2(t)も規格化されていることが分かります。次に分布f_1(t)に従う確率変数をX_1、分布f_2(t)に従う確率変数をX_2で表すことにします。X_1X_2の平均をそれぞれE(X_1)E(X_2)で表すことにします。すると

  • E(X_2)=\Bigint_0^{\infty}tf_2(t)dt=\Bigint_0^{\infty}t\frac{1}{a}f_1\left(\frac{t}{a}\right)dt=a\Bigint_0^{\infty}{\tau}f_1(\tau)d\tau
    • =aE(X_1)

よって

  • E(X_2)=aE(X_1)・・・・(6)

となります。すなわち、X_2の平均はX_1の平均に倍率をかけたものになります。次にX_2の2乗平均E(X_2^2)を求めてみます。

  • E(X_2^2)=\Bigint_0^{\infty}t^2f_2(t)dt=\Bigint_0^{\infty}t\frac{1}{a}f_1\left(\frac{t}{a}\right)dt=a^2\Bigint_0^{\infty}\tau^2f_1(\tau)d\tau
    • =a^2E(X_1^2)

よって

  • E(X_2)=a^2E(X_1)・・・・(7)

次にX_2の分散V(X_2)を求めてみます。

  • V(X_2)=E(X_2^2)-E(X_2)^2・・・・(8)

式(6)(7)を式(8)に代入すれば

  • V(X_2)=a^2E(X_1^2)-a^2E(X_1)^2=a^2V(X_1)

よって

  • V(X_2)=a^2V(X_1)・・・・(9)

次にX_2標準偏差\sigma(X_2)は式(9)からただちに

  • \sigma(X_2)=a\sigma(X_1)・・・・(10)

となります。最後にX_2の変動係数c(X_2)は式(10)と(6)を用いて

  • c(X_2)=\frac{\sigma(X_2)}{E(X_2)}=\frac{a\sigma(X_1)}{aE(X_1)}=\frac{\sigma(X_1)}{E(X_1)}=c(X_1)

よって

  • c(X_2)=c(X_1)・・・・(11)


よって2つの分布の形が同じである場合、その一方の平均は他方の平均に倍率をかけたものになり、変動係数は両者で同じになります。


また、式(1)によって分布f_1(t)を分布f_2(t)に変換することを、分布をa倍する、あるいは、分布をa倍に拡大する、と言い表すことにします。
あるGI/G/s待ち行列で、到着間隔分布と処理時間分布を同じa倍、拡大してもその待ち行列稼働率uは変わりません。これは平均到着間隔と平均処理時間が等しくa倍されることから明らかでしょう。