GI/G/s待ち行列の平均待ち行列長(2)

平均待ち行列長は分布の形と装置台数と稼働率で決まる。」では、平均待ち行列長が平均処理時間に依存しないことを述べました。これで「GI/G/s待ち行列の平均待ち行列長」の最後のところで宿題にしていた

実は平均待ち行列L_qは平均処理時間t_eに依存しないのでこれで問題ないのですが、なぜ平均待ち行列L_qは平均処理時間t_eに依存しないのか、その理由を明らかにする必要があります。

という部分に答えたことになります。


私はこれで先に進めると一旦は思ったのですが、この「GI/G/s待ち行列の平均待ち行列長」の最初に書いた

GI/G/sで全ての装置が処理中である期間の処理開始の発生の様子が、装置を1台にしてその代わり処理時間分布を1/sに縮小したGI/G/1で、装置が処理中である期間の処理開始の発生の様子と少なくとも平均と標準偏差については同じである

というのが間違っていることに気づいてしまい、また、進むべき方向を見失ってしまいました。それはその前提となった「一定期間の処理開始回数の平均と標準偏差」での考察に間違いを見つけたからです。具体的には

標準偏差については、処理時間が装置間で、または処理間で、独立であることを考慮すれば

  • s\sigma[N(s;T_2)]^2=\sigma[N(s;T)]・・・・(5)

となります。

という個所です。この個所の間違いを、反例を挙げることで指摘したいと思います。
処理時間が一定でありt_eであるとします。Tとしてt_eに等しい値をとることにします。つまりT=t_eです。また、s=2であるとします。Tの間には2台の装置のどちらも必ず1回だけ処理開始を発生させるのでN(s;T)は確率1で2となり、よって

  • \sigma[N(s;T)]=0・・・・(6)

となります。次にN(s:T_2)について考えて見ます。この場合T_2=t_e/2なので1台の装置が処理開始をT_2の期間に発生させるのは、ゼロ回である確率が1/2、1回である確率が1/2、となります。装置の動きは独立なので、2台の装置をまとめて考えた場合は、T_2の期間に処理開始がゼロ回である確率が1/4、1回である確率が1/2、2回である確率が1/4、となります。そうなると\sigma[N(s;T_2)]はゼロより大きいことになります。よってs\sigma[N(s;T_2)]もゼロより大きいことになります。よって式(5)が成り立たないことが分かります。


さあ、また考え直さなければなりません。