花よりほかに・・・


まだ、それほど咲いていない。


そなたへと行きもやられず花桜



よき程なる童の、様体(ようたい)をかしげなる、いたく、しなえ過ぎて、宿直(とのい)姿なる、蘇芳にやあらむ、つややかなる袙(あこめ)に、うちすぎたる髪の裾、小袿(こうちぎ)に映えて、なまめかし。月の明き方に、扇をさしかくして、「月と花とを*1」と口ずさみて、花の方へ歩み来るに・・・*2


*1:あたら夜の月と花とを 同じくは心知られむ人に見せばや 源信明

*2:「花桜折る中将」より。堤中納言物語のうちの1つ。

堤中納言物語―付現代語訳 (角川文庫ソフィア)

堤中納言物語―付現代語訳 (角川文庫ソフィア)