帰郷

連休で故郷に少し滞在した。しかしだからといって時間をさかのぼることが出来たわけではない。


以前はここに大きな総合病院があって、子供の頃はよくお世話になっていた(入院したこともあった)が、数年前に別の病院と統合されて別の場所に移転した。跡地の一部はスーパーになり、他の部分は住宅地になった。かつて大きな病院があったことが不思議に思えるぐらいの今の風景だ。



私が幼年期にかよった保育園がこの場所にあったが、随分前に取り壊されて、跡地は公園になった。この小さなジャングルジムは自分がかよっていたころあったそのもののような気がする。もしそうだとするともう50年ぐらい前のものということになるが、私の勘違いだろうか? しかし、どうしてもこの形はかつての記憶にある形と同じような気がする。



同じ敷地内にある砂場。
この砂場の位置も、昔、保育園があった時の位置から変わっていないと思うが・・・。



近くにあるお寺。小学生の頃、みんなとここでよく遊んだ。考えてみれば、お寺の人は、よく私達を叱らなかったものだ。
ここの裏には私の母方の祖父母のお墓がある。お参りをした。ふと、ここに私が生れる前に若くして死んだ母の弟、会ったことのない私の伯父、もこのお墓に入っていることを思い出した。この日、私が母が物置にしまってあった私の大学時代の教科書を出してきて、これらを捨ててよいかどうかを私に訊いた。その中の1冊は、実は私の本ではなくて、この伯父の本だった。電磁気学の本で、私は高校時代、頭をひねりながらこの本をよく読んでいた。gradだとかdivだとかrotといったベクトル解析の演算子はこの本で初めて知ったという記憶がある。単位系があとで自分が習ったものと異なっていて苦労した覚えもある。高校生の頃の私はこの本を解読することで、何か伯父の意志のようなものを継いでいるような気持ちがしていた。それも何十年も昔のことである。