待ち確率の近似式(1)

平均待ち行列長の近似式の精度比較(7)」において、平均待ち行列長の近似式と待ち確率の近似式が密接に関係することが判明したので、ここで「当面の目標」の2番目の目標である待ち確率\Pi(GI/G/s)の近似式を探求することを始めようと思います。


平均待ち行列長の近似式の精度比較(7)」ではGI/M/s待ち行列について

  • \Pi(GI/M/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}b・・・・(27)

ただし、

  • c_a{\le}1の時
    • b=\frac{u[u+(2-u)c_a^2]}{2(1-u)+u[u+(2-u)c_a^2]}・・・・(22)
  • c_a>1の時
    • b=\frac{u(c_a^2+1)}{2(1-u)+u(c_a^2+1)}・・・・(23)

を導き出しましたが、これはあくまで装置の処理時間の分布が指数分布の場合の式です。GI/G/sの時に上の式がそのまま成り立つとは限りません。式(27)をGI/G/sの場合に拡張することを考えます。まず、M/M/sの場合を考えます。するとこれはGI/M/sの場合の1つですから、式(27)を適用出来て

  • \Pi(M/M/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}b・・・・(28)

となります。さらに式(22)でc_a=1とすることにより

  • b=\frac{u[u+(2-u)]}{2(1-u)+u[u+(2-u)]}=\frac{2u}{2(1-u)+2u}=\frac{2u}{2}=u

となるので

  • b=u・・・・(29)

よって式(28)は

  • \Pi(M/M/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-1}・・・・(30)

となります。一方、M/G/sにおいて

  • \Pi(M/G/s)=\Pi(M/M/s)・・・・(31)

は非常に精度の高い近似でした。よって、

  • \Pi(M/G/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-1}・・・・(32)

となります。今のところ、GI/M/sM/G/sについて\Piの近似値が明らかになった訳です。これらを拡張してGI/G/s\Piの近似式を求められないでしょうか?
最初に考えつくことは、式(27)(22)(23)をそのまま使う方法です。これらの式をM/G/sに当てはめると、M/G/sではc_a=1なので式(22)にc_a=1を代入すると

  • b=\frac{u[u+(2-u)]}{2(1-u)+u[u+(2-u)]}=\frac{2u}{2(1-u)+2u}=\frac{2u}{2}=u

よって

  • b=u・・・・(33)

これを式(27)に代入すると、式(32)に一致します。



しかし、この近似式はD/D/sの時に精度が大きく悪くなります。D/D/sの場合、つまりc_a=0c_e=0の場合は明らかに

  • \Pi(D/D/s)=0・・・・(34)

ですが、式(27)(22)(23)からはそうはなりません。GI/M/sの時には式(27)(22)(23)であり、M/G/sの時には式(32)であり、D/D/sの時には式(34)であるようなGI/G/sのための\Piの近似式をどう想定すればよいでしょうか? ひとつの案は

  • \Pi(GI/G/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}b\frac{2(c_a^2+c_e^2)}{(1+c_a^2)(1+c_e^2)}・・・・(35)

とすることです。ただしbは今まで通り式(22)(23)で与えられるとします。式(34)の中の

  • \frac{2(c_a^2+c_e^2)}{(1+c_a^2)(1+c_e^2)}・・・・(36)

は、c_e=1ならば

  • \frac{2(c_a^2+1)}{(1+c_a^2)(1+1)}=1

となりますし、同様にc_a=1でも1になります。さらにc_a=0かつc_e=0で0になります。よって式(35)はGI/M/sの時には式(27)(22)(23)に等しくなり、M/G/sの時には式(32)に等しくなり、D/D/sの時には式(34)に等しくなります。もちろん、式(36)の部分は、(36)の代わりに(37)

  • \frac{2(c_a+c_e)}{(1+c_a)(1+c_e)}・・・・(37)

であっても同じですが、今までc_ac_eは必ずc_a^2c_e^2の形で式に登場するので式(36)の形を採用しました。