平均待ち行列長の近似式の精度比較(7)

さて「平均待ち行列長の近似式の精度比較(4)」の最後では

今、検討している近似式はL_q(GI/M/1)については精度が高いので、sが大きいときにL_q(GI/M/s)の精度が低下する理由は

  • \frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}・・・・(13)

にあることになります。

と書きました。そして今では

  • \Pi(GI/M/1)=b・・・・(14)

であり、このbは、平均待ち行列長の近似式

  • c_a{\le}1の時
    • L_q=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(8)
  • c_a>1の時
    • L_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(9)

に整合する形で比較的精度の高い近似値を計算することが出来ることが分かりました。となると、sが大きいときにL_q(GI/M/s)の精度が低下する理由は\Pi(GI/M/s)の近似方法にあることになります。ということで、sが大きい時のGI/M/s待ち行列の平均待ち行列長の近似式の精度を向上させる問題は、「当面の目標」に書いたもうひとつの目標である「待ち確率(ジョブ到着時にジョブが待たなければならない確率)\Piを近似する」ことに連動してきます。おそらく事情はもっと一般化した待ち行列であるGI/G/s待ち行列についても同様でしょう。



では、式(8)(9)は\Pi(GI/M/s)をどのように近似していることを前提にしていることになるかを、これから探っていきます。「平均待ち行列長の近似式の精度比較(4)」の式(12)

  • L_q(GI/M/s)=\frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}L_q(GI/M/1)・・・・(12)

から

  • \frac{L_q(GI/M/s)}{L_q(GI/M/1)}=\frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}・・・・(24)

です。式(23)の左辺に式(8)や式(9)を代入すると、どちらの場合も

  • \frac{L_q(GI/M/s)}{L_q(GI/M/1)}=\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{u^2}
  • \frac{L_q(GI/M/s)}{L_q(GI/M/1)}=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}・・・・(25)

となります。これを式(24)に代入して

  • \frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}
  • \Pi(GI/M/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}\Pi(GI/M/1)・・・・(26)

式(26)に式(14)を代入して

  • \Pi(GI/M/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}b・・・・(27)

つまり、式(8)(9)が近似的に成り立つならば、\Pi(GI/M/s)の近似式は必然的に式(27)になります。ただしbは、

  • c_a{\le}1の時
    • b=\frac{u[u+(2-u)c_a^2]}{2(1-u)+u[u+(2-u)c_a^2]}・・・・(22)
  • c_a>1の時
    • b=\frac{u(c_a^2+1)}{2(1-u)+u(c_a^2+1)}・・・・(23)

で求めます。