平均待ち行列長の近似式の精度比較(8)

さて、「平均待ち行列長の近似式の精度比較(7)」では

sが大きいときにL_q(GI/M/s)の精度が低下する理由は\Pi(GI/M/s)の近似方法にあることになります。ということで、sが大きい時のGI/M/s待ち行列の平均待ち行列長の近似式の精度を向上させる問題は、「当面の目標」に書いたもうひとつの目標である「待ち確率(ジョブ到着時にジョブが待たなければならない確率)\Piを近似する」ことに連動してきます。おそらく事情はもっと一般化した待ち行列であるGI/G/s待ち行列についても同様でしょう。

と書きました。そして「平均待ち行列長の近似式の精度比較(4)」では式(12)

  • L_q(GI/M/s)=\frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}L_q(GI/M/1)・・・・(12)

を示しました。今、「待ち確率の近似式(13)」に示すように\Pi(GI/G/s)のより精度の高い近似法を見つけたわけですから、これを式(12)に当てはめることでL_q(GI/M/s)についてのよりよい近似式を得ることが出来そうです。これを試みてみましょう。


待ち確率の近似式(13)」によれば

  • \Pi(GI/G/s)=\frac{b}{2}\left[u^{\sqrt{2(s+1)}-2}+b^{\sqrt{2(s+1)}-2}\right]・・・・(49)

でした。よってGI/M/s待ち行列にとっても

  • \Pi(GI/M/s)=\frac{b}{2}\left[u^{\sqrt{2(s+1)}-2}+b^{\sqrt{2(s+1)}-2}\right]・・・・(50)

となります。さらに「待ち確率の近似式(13)」に示すように式(49)にs=1を代入することにより

  • \Pi(GI/G/1)=b・・・・(51)

を得ることが出来るのでGI/M/s待ち行列にとっても

  • \Pi(GI/M/1)=b・・・・(52)

となります。また、L_q(GI/M/1)については「平均待ち行列長の近似式の精度比較(1)」の式(8)(9)

  • c_a{\le}1の時
    • L_q(GI/G/s)=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(8)
  • c_a>1の時
    • L_q(GI/G/s)=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(9)

s=1c_e=1を代入した式

  • c_a{\le}1の時
    • L_q(GI/M/1)=\frac{c_a^2+(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u^2}{1-u}・・・・(53)
  • c_a>1の時
    • L_q(GI/M/s)=\frac{c_a^2+1}{2}\frac{u^2}{1-u}・・・・(54)

を用いることにすると(つまり、s=1の時には(53)(54)の精度が良かったので)

  • c_a{\le}1の時
    • L_q(GI/M/s)=\frac{c_a^2+(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u^2}{2(1-u)}\left[u^{\sqrt{2(s+1)}-2}+b^{\sqrt{2(s+1)}-2}\right]・・・・(55)
  • c_a>1の時
    • L_q(GI/M/s)=\frac{c_a^2+1}{2}\frac{u^2}{2(1-u)}\left[u^{\sqrt{2(s+1)}-2}+b^{\sqrt{2(s+1)}-2}\right]・・・・(56)

となります。