映画「ラストエンペラー」のワンシーンから

映画ラストエンペラーでは主人公の溥儀の結婚式(「大婚」というのがそうだ)の時に、清朝の官服で着飾った高位らしい人々が京劇を鑑賞してどよめくワンシーンがありますが、11月18日に紹介した本「紫禁城」に、私はそれに類似する記述を見つけて、興味がひかれました。

3日目には乾清宮で祝賀式が行われた。御花園に面した養性斎には宴席がととのえられ、神武門に近い漱芳斎の小戯台では、楊小桜、梅蘭芳など当代の人気俳優による京劇の上演がつづく。そこには私人の資格でと断った現役の大臣や官僚、旧王侯貴族、遺臣にまじって関東軍をバックに次期大総統の椅子をねらう張作霖の名代として後に満州国第二代総理となる張景恵や、戊戌変法の旗振り役をつとめ伊藤博文らの配慮で辛うじて日本へ亡命して処刑を免れた康有為の姿があり、廃帝をめぐる複雑な思惑を垣間見させる。
 北京飯店特製のオードブルが並べられた別室には、北京に駐在する14カ国の公使夫妻が姿をみせ、純白のフロックコートに身をつつんだ溥儀が、シャンパンの乾杯につづいて英語で短い謝辞をのべ、婉容と並んで一人一人と握手をかわすなど、近代的な清室をアピールする。
 その日の紫禁城はまさに百鬼夜行の観があった。


紫禁城」 入江曜子著

映画ではそのような意味づけはなされておらず、単に中国色をアピールするいち場面となっているのですが、あの観劇の客の中に張景恵(映画ではあとで登場するが・・・)や、康有為がいたと想像するとおもしろく思いました。