【論文翻訳】M/D/s待ち行列の根とErlang、Crommelin、Pollaczekの業績に戻る(5)

|z|{\le}1A(z)がゼロを持たなければならないと仮定すると、|z|{\le}1z^s=A(z)s個の根は
z=wA^{1/s}(z)w^s=1     (13)
を満足することが知られている。実現可能な全てのwについて、式(13)は|z|{\le}1内の唯一の根を持つことを示すことが出来、初期値z_k^{(0)}から始めて連続する代入
z_k^{(n+1)}=w_kA^{1/s}\left(z_k^{(n)}\right), k=0, 1,…, (14)
によって方程式を解こうとすることが出来る。
補題 3.4  |z|{\le}1についてA(z)にゼロがなく\left|\frac{d}{dz}A^{1/s}(z)\right|<1の時、不動点方程式(14)は期待する根に収束する。

 
(14)の配列の収束に必要な条件は以下のように公式化出来る。


条件 3.5 条件3.2を満足し、z\in{S}_{A,s}の全ての点について\left|\frac{d}{dz}A^{1/s}(z)\right|<1が成立する。


条件3.2は条件3.5よりずっと弱く、よって(12)は(14)より大きなAのクラスについて適用可能である。それにもかかわらず、A(z)=\exp\left(\lambda(z-1)\right)について、配列
z_k^{(n+1)}=w_k\exp\left\{\rho\left(z_k^{(n)}-1\right)\right\}k=0,1,…,s-1,     (15)
が初期値z_k^{(0)}=0で始めて期待する根に収束するためには、|z|{\le}1についてA(z)\neq{0}かつ\left|\frac{d}{dz}A^{1/s}(z)\right|<1、であることはすぐに見られる。図1に\rho=0.1, 0.5, 1.0についてのS_{A,s}を示す。曲線上のドッドはs=20の場合について(12)または(15)のいずれかから決定出来る根z_kを示している。



図1:ポアソンの場合の S_{A,s}


条件3.2は、S_{A,s}が2重点のない閉曲線であることを示す一方、条件3.5は明らかにそのような曲線については必ずしも成立しない。条件3.5は、一価関数の幾何理論からの凸状と星型の概念と比較出来る。


定義3.6 (i) 2重点のない閉曲線は、その内部のある点からの任意の光線が厳密に1点で曲線と交わるならば、その点について星型であると呼ばれる。
(ii) 2重点のない閉曲線は、その内部の任意の点について星型である時、凸状と呼ばれる。


すると以下の興味深い結果が成立する。


定理 3.7
S_{A,s}が凸 ⇒ 条件3.5が成立 ⇒ S_{A,s}が0について星型。